山陰海岸ジオパークは、京都府の京丹後市、兵庫県の豊岡市、香美町、新温泉町、鳥取県の鳥取市、岩美町にまたがる東京都よりひとまわり大きいエリアです。
ジオパークは地球や大地を意味する「ジオ」と公園を意味する「パーク」を組み合わせた造語でなんとなく難しそうですが、
ジオパーク流散策には次の3つの楽しみ方があるそうです。
①素晴らしい景観そのものを楽しむ
②景観がどう形成されたのかを知って楽しむ
③そこで営まれる人々の暮らしを知って楽しむ
今回は、兵庫県美方郡香美町小代区にある「うへ山の棚田」を訪れました。
うへ山の棚田のある香美町小代区は奥深い谷に位置しています。
貫田地区に到着して最初に目に入ってくるのは、谷の中心を矢田川が流れ、山の斜面に家々と棚田が並ぶ美しい景観です。
橋からのぞいてみると、渓谷が削られ谷が深くなり、谷底を矢田川が流れています。
貫田の集落には、写真のポイントで右側の坂道を登っていきます。
分岐点には手作りの案内看板が設置されており、のどかな雰囲気を醸し出しています。
道中、斜面に立ち並ぶ貫田の集落の中を通り抜けます。
集落を抜けてしばらく山道を登っていくと右手の道路下に棚田が見えてきます。
うへ山の棚田は、1999年に「日本の棚田百選」が認定され、2022年、ポスト棚田百選として「つなぐ棚田遺産~ふるさとの誇りを未来へ~」にも認定されました。
休耕田がほとんどなく、大きく弧を描きつつ谷に落ち込む景観は背後の山並みと調和して美しいということで「日本の棚田百選」に選定されたそうです。
担い手不足などから荒廃している棚田が多いなか、20年以上も美しい景観を維持している地元の方々の熱意が伝わってきます。
美しい棚田の景観を満喫したあとは、棚田のある地形に注目です。
高台から眺めると棚田が急峻な山間部にあるのかが分かります。
山の斜面が急で平坦地が少ない山間部では家や田畑を作る場所が限られています。
そこで、人々は地すべりによってできた緩やかな傾斜地に棚田を作りました。
地すべりが発生する地域は湧水が多く、稲作に必要な水も確保することができました。
また、棚田は雨水を貯え、地下に浸透するのを防止し、地すべりが発生するのを防ぐ役割も果たしてきました。
うへ山の棚田をさらに上から眺めようと山道を登っていくと吉滝キャンプ場に到着します。
ここでは真夏でも涼しく、夜は美しい夜空に包まれるそうです。
標高600mのところにある吉滝キャンプ場には、小代区を一望できる展望台があり、絶景を楽しむことができます。
ここからうへ山の棚田を見ると、急峻な山間部に棚田の部分だけがなだらかになっているのが分かります。
うへ山の棚田をドローンで撮影したふるさと特派員の投稿では、このことがさらに実感できますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
「村岡高校生とドローンの競演」←クリックしてください。
地すべり地域といえば災害を連想しがちですが、うへ山の棚田を訪れてみると、自然と共生する先人の知恵の素晴らしさを感じます。
新緑の映える但馬を散策
取材日2021年5月23日