今まで但馬のヨシノボリ類を何種類か紹介してきました。今回はその総集編です。ヨシノボリ類とは、ハゼ科ヨシノボリ属に分類される淡水魚の総称です。但馬ではグズとか、グズッパと呼ばれています。大きさは10センチ以下の小さな魚です。石の下に隠れていることが多く、川遊びでよく獲れる魚です。
現在、日本に棲んでいるヨシノボリ類は18種以上とされていますが、未だ分類が混乱しています。今後も新たな種類に分かれたり、種名が変わるかもしれません。多くが両側回遊性といって、川で産まれてすぐに海へ降り、しばらく海で過ごした後、川に戻ってきます。中には海へ降ることなく一生を川で過ごす河川陸封型というタイプもいます。
今のところ、但馬地方では7種類のヨシノボリ類が確認されています。姿がよく似ているため、慣れないと見分けがつきません。種類によって棲んでいる川や場所が異なったりします。それぞれの簡単な特徴と、過去記事のリンクを一緒に紹介していきます。
胸びれの黒い斑点が特徴です。名前のとおり、ヨシノボリ類では大型で体長10センチを超えます。大きな川の上流域に棲んでいます。円山川や竹野川、矢田川の上流域に棲んでいます。両側回遊性で、河口から40km以上も遡ります。
このシマヒレヨシノボリだけは個別の記事を書いていません。以前は「トウヨシノボリ縞鰭型」とされていましたが、2010年に別種とされました。
他のヨシノボリ類と比べて、顔が丸いです。また、尾びれと背びれに縞模様があります。
但馬では今のところ、円山川水系だけで確認されています。平野部の沼地やため池など、止水環境に棲んでいます。川とつながっていれば、ビオトープにも棲んでいます。豊岡盆地周辺ではビオトープが沢山作られていますが、それらが川とつながって魚が自由に行き来できるようになれば、シマヒレヨシノボリの棲み場所が増えるかもしれません。河川陸封型で一生を淡水で過ごします。
他のヨシノボリ類は胸びれの筋の本数が18本以上ですが、カワヨシノボリは17本以下です。その名のとおり、海に降りずに一生を川で過ごします。中流から上流域に棲んでいます。但馬では円山川、竹野川、矢田川の3水系に棲んでいます。
以前はトウヨシノボリという種名がついていましたが、現在は種名がありません。詳しい経緯は先月の記事をご覧ください。両側回遊性です。河川陸封型のものもいるようです。
但馬では円山川水系だけに棲んでいます。
未記載種には色んな「型」がいまして、これは「宍道湖型」と呼ばれる型です。オオヨシノボリによく似ています。
すべて同じ属に含まれる近縁なグループですが、種によって生息環境は様々です。たとえば、旧トウヨシノボリは広い汽水域がある川に棲んでいますが、逆にクロヨシノボリは塩分の高い外洋に面した小川だけに棲んでいます。これらの但馬における生息場所も、その性質が反映されています。
川づくりなどの取り組みでは大きな川が注目されがちですが、海岸沿いの小川も重要な環境です。但馬には多くの川が流れており、その規模や環境も様々です。限られた川だけに目を向けるのではなく、色んな川、環境を保全していくことが大切です。
写真・文 コウノトリ市民研究所 北垣 和也