但馬ふるさとづくり大学の現地講座に参加してきました。テーマは「豊岡駅通の活性化に向けた新たな動き」。今回はその様子をお届けします。
JR豊岡駅から東西に約800m続く豊岡駅通商店街は、豊岡稽古堂をはじめ、歴史的価値のある建物が点在しています。また、ふれあい公設市場は、日本最古級の木造アーケードに覆われている昭和初期から続く現役の市場です。少し歩けば大正から昭和の風情ある景色にタイムスリップした感じになります。
今回の講座では、そんな街並みを大切にし、ゲストハウスやカフェ、私設図書館などを開業する「新たな担い手」たちによる、まちの活性化に向けた取り組みについて、街並み散策しながら学んできました。
スタートは豊岡稽古堂からです。1927年(昭和2年)に建設され、旧豊岡町役場、旧豊岡市役所本庁舎として使われてきました。市役所の新庁舎建設の時には、道路側に25m曳家されています。RC造(鉄筋コンクリート造)です。
1925年(大正14年)の北但大震災により、豊岡の市街地の大半が焼失しました。復興にあたり新たな市街地は、当時最新の文化様式が採り入れられました。また、防火に重点を置いた建築補助制度により多くの耐火鉄筋構造の店舗が建築され、現在の街並みが形成されました。
豊岡駅通りは、一定の期間に建てられたそのような建築物が多く残っており、豊岡復興建築群と言われています。
少し東に歩くとRC造の建物が並んでいます。
写真左側が旧但馬銀行豊岡東支店になります。その右側に3棟連なっているように見える建物がありますが、実は3戸で1棟の建物であり、それぞれに意匠を凝らした窓装飾や軒下飾りが見られます。
よく見ると、2階と屋根の間に茶色い部分があります。この建物は、もともと陸屋根(屋根勾配のない平面な屋根)だったのですが、積雪等を考慮して、勾配屋根に改造されているそうです。
さらに東に進むと「だいかい文庫」があります。中をのぞいてみましょう。
2020年12月にオープンしたシェア型の図書館・本屋さんです。本を通じた交流により様々な人の居場所になるような場所を目指してつくられたそうです。当然ここで読んだり、借りたり、買うこともできますし、カフェもあります。
おもしろいのは、月額2400円で「一箱本棚オーナー」になれ、自分だけの本棚を持つことができ、おすすめの本を並べることができます。そして、このオーナーさんが店番をしていることもあるとか。
店員さんは、だいかい文庫のスタッフだけでなく、お医者さんやアート関係者、新聞記者だったり様々。居場所の相談や健康相談にも乗ってもらえるとのことなので、興味のある方は、スタッフに一声かけてみてください。
過去の特派員ブログでも詳しく取材されています → 豊岡のまちなかにできた小さな図書館・だいかい文庫とは?
さて、今度は豊岡駅側に少し戻り、豊岡市役所の向かいにある「オーベルジュ豊岡1925」にやってきました。この建物もRC造で、外壁はタイル貼りで、正面に壁柱を並べた重厚な外観になっています。1934年(昭和9年)に兵庫県農工銀行として建てられ、その後豊岡市役所の庁舎等として利用されていました。2014年に改装され、ホテル・レストランとしてリニューアルされました。結婚式や披露宴もできるそうです。
過去の特派員ブログでも詳しく取材されています → 但馬近代化遺産探検・オーベルジュ豊岡1925
続いては、日本で最も古いとされる木造市場「ふれあい公設市場」です。大正末期から昭和初期頃に整備されたもので、南北70mに連なった市場は、生花、鮮魚、天ぷら、菓子などのお店が軒を並べており、近年、カフェやゲストハウスなど新たな店舗も加わっています。
内部のアーケード式の天井は合掌造りのようになっていて、光が差し込んできます。また、敷石やのれんなどで町家風にしたててあり、昭和のレトロ感があります。
さて、公設市場の中には、ゲストハウス「Hostel Act」があります。2020年3月にオープンし、個室2部屋、ドミトリー1部屋で、最大12人が泊まれるそうです。
そして、このゲストハウスの1F部分が「もりめ食堂」です。特徴的なのは、ゲストハウスのシェアリビング ・ キッチンでありながら、ふらっと立ち寄れる定食とちょい飲みの店でもあり、旅人と地元の人の語らいの場となってほしいとういう狙いがあるんだとか。
経営されておられるお二方は、豊岡へ移住してこられた方で、公設市場を、豊岡を盛り上げてくれています。
いかがでしたでしょうか。歴史的に価値のある建物を保存しつつ、街の活性化に向けて新たな風も吹いています。
実は、もう一カ所見学してきたのですが、長くなりましたので一旦ここで置かせていただきます。次回は、廃業していた老舗料亭を複合施設として再生された「とゞ兵」の様子をお届けします。
次回記事はこちらを→ 豊岡駅周辺の街並みを散策② ~とゞ兵編~