駅でレンタサイクルを借りたり、列車に自転車を輪行して行くことのできる見どころ情報をお送りする「駅サプリ」。
(サプリは補足という意味です。「たじま途中下車の旅」を”個人的に”補足し、またお読みくださる皆さんの心の栄養補給の足しになれば幸いです。)
さて、今回はJR播但線「新井駅」です。大正から昭和にかけて急速に発展し、「新井に行けば生活のすべてが揃う」といわれたのだとか。また東洋一といわれた神子畑選鉱場の発展に伴い、この地域も大いに栄えました。
今は落ち着いた町並を残す新井近辺を散策します。(駅近辺の見どころは、「たじま途中下車の旅~新井駅編~」に詳しくのっています。先に見てね。)
新井駅です。明治34年当時の駅舎を大事に使用されています。右上がその証で、建物財産標です。駅の周辺には人一りがやっと通れる線路のトンネルがあります。頭のすぐ真上を列車が通るという珍しい経験ができるかもしれませんが、怖いので止めときます。
駅から山沿いを北向きに400mほど行くと、南無阿弥陀仏の大きな名号碑と、三人一組、赤い前掛けで結ばれた六地蔵様がおられます。季節のお花が活けられ、大切に守られています。
その横に階段があり、上には大師堂があります。新井の街並みが一望でき気持ちいいですねえ。遠くの山並みには桜がちらほら。
元来た道を引き返し、駅を通り過ぎてすぐ先を右に曲がると、神照院様があります。桜花満開の時期を過ぎ、花びら舞う階段を上がり、お参りさせてもらいました。
若葉が芽生え、落ち葉が大変多い時期ですが、お庭はきれいに掃き清められ、筋が付けられています。日本の美、という感じ。
建物の壁には、漆喰で鳳凰(?)のレリーフが施されていいます。本堂には龍の彫刻。
一番高いところまで上がらせてもらうと、まちが一望できます。
駅から県道70号を1㎞ほど南下すると、道路沿いの桜の下に崎山稲荷神社があります。こちらの狐様は冠婚葬祭でお椀が必要になると、碗を貸してくださる「椀貸し狐」のお話が伝わっています。以下は兵庫県立歴史博物館のHPより。
『兵庫県に「椀貸し」伝説があること、それどころか全国各地に同じような伝説があることを知って、懐かしく思うと同時にとても新鮮な驚きを感じた。「ある所でお願いすれば、お椀を貸してもらうことができた。使った後はきれいに洗って返す。ところがある時、悪い人が借りたお椀の一つを返さなかったため、2度と貸してくれなくなった」というのが、このお話の筋書きである。兵庫県に残る椀貸し伝説も、細かい部分はともかく、すべて同じパターンを踏襲している。』
なるほど、狐様だけに”おあげ”たのではなく、貸してくださるのです。(何のことやら、、。)
きれいな朱色は最近新しく塗られたもので、地元で大切にされているのが分かります。
崎山稲荷神社から八代川を上流に約850m遡ったところにある、国指定天然記念物「足利神社の大ケヤキ」です。毎度のことなんですが、写真では大きさがまっったく伝わりません!!巨大な構造物のようです。ぜひ現地で、ご自身の目で確認してみてください。
以下は朝来市のHPから。『推定樹齢1500年を誇る県下一番の巨木です。樹高約23m、幹周約9.8m。地域住民は「大金木(おおかなぎ)」と呼び、周囲に玉垣をめぐらせて、神木として崇め大切にしてきました。』
目の前に立つと、崇敬の念をいただかざるを得ません。古木とはいえ、これからも長寿を保ってもらいたいです。
駅から国道312号を南下し、朝来市山口区に鉄筋コンクリート造りの旧山口村役場があります。北但大震災(大正14年)後に、豊岡市では鉄筋コンクリートで復興建築群が建てられましたが、こちらは震災前に建てられており、但馬に現存する最古の鉄筋コンクリートの建物です。現在も公民館として現役活躍中です。
シンプルなつくりの中に、ポーチや中央窓の上の飾りが印象的で、但馬の近代化遺産です。
1863年、江戸幕府を倒し新しい時代をつくるべく、生野代官所を占拠した事件を生野義挙といいます。結果的には失敗し、多くのいのちが散りました。以下は朝来市HPより。
『生野義挙で自決した志士たちが祀られています。(中略)志士 13 名は、反旗をひるがえした農民たちと対峙しますが、「もはやこれまで、これ以上、百姓と戦をしても仕方がない」と覚悟を決め、山伏岩の岩陰で自刃しました。「殉節忠士之墓」は(※写真上・中央)、明治元年(1868)2 月、西園寺公望が山陰道鎮撫総督として但馬入りした時に揮亳し建立されたものです。』
写真下の石碑には「正義十三士自盡之址」と刻まれています。
激しい戦いがあったこの地も、今は緑の木立に囲まれ、静かに時が流れます。
山口護国神社の道路を挟んだ反対側に羽渕鋳鉄橋があります。明治20年竣工、橋長18.15m 幅員3.175m、「羽渕のめがね橋」の愛称のある鋳鉄製二連の美しい洋式の橋です。神子畑鋳鉄橋と同時にかけられ、神子畑鉱山・選鉱所から生野精錬所へ鉱石を運搬するための、五つの鋳鉄橋のうちのひとつだそうです。平成7年に当初架橋時の姿に復元、移築されました。ふわりとした優美な姿ですねえ。
駅から少し遠いですが、がんばって「あさご芸術の森美術館」へ行こう! 桜の頃はお花見の宴会をしている一団に会えたり、近所のハナモモの大きな木を堪能できたりします。
ご紹介したいのは、5月5日まで開催している「~不思議・びっくり~ あさご錯覚の森美術館展」です。見る位置によって形が変わるオブジェ(四角の断面が丸に?)や、ぐるぐる動いて見える絵(回る回る!)、ビー玉が坂道を上ったりと、思わず「お、お~、なんじゃこりゃ?」と声が出てしまいます。
新井駅周辺で自然と歴史と伝承を、ゆっくりと流れる時間の中で感じてみませんか?
但馬はいつでも、旅人を迎えてくれます。
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