佐津川右岸に位置し日本海に面する兵庫県香美町香住区訓谷地域。
美しい弧を描く穏やかな砂浜が広がり、夏場には多くの海水浴客が訪れます。
また、そんな海辺に佐津温泉の民宿が多く軒を並べています。
兵庫県で最北端の駅・佐津駅からほど近いこの地域を、途中下車して散策してみます。
佐津駅の駅舎は、木造で1911年(明治44)開通当時の駅舎がほぼそのまま残っているとのことです。
1984年(昭和59)から無人駅となっている素朴な木造の駅舎です。
通常は、普通列車しか停車しませんが、カニシーズンの冬場には特急「はまかぜ」が停車することもあります。
駅名標では、ローマ字で「satsu(さつ)」の表記になっていますが発音する際には「さづ」と言います。
佐津駅を出て右に曲がり佐津郵便局を通り過ぎると、青い印象的なつり橋が目に入ります。
訓谷地区のランドマークともいえる歩道橋「通称:さづっ子橋」です。
夜はライトアップが行われており、また違った雰囲気を醸し出します。
毎年、8月上旬には、この付近で「佐津川七夕まつり」が催されます。
佐津川一帯で約花火が打ち上げられたり、燈篭ながしが行われたりします。
さづっ子橋を渡って直進し、佐津小学校を通り過ぎた先の十字路を右に曲がると次の目的地である沖野神社へ到着します。
沖野神社は、鎌倉時代後期、隠岐(島根県)に流された御醍醐天皇が3体のご神像を海に流し、その1体が、現在の佐津地区公民館のあたりまであった浜に打ち上げられ、祭神としてお祀りしたと伝えられています。
三番叟(さんばそう)とよばれる民俗芸能が伝わっており毎年秋に境内にある舞台で披露されます。
また、沖野神社の境内には、迫力のある大ケヤキを見ることができます。
高さ約25m、幹回り4.95mで、但馬の巨木100選にも選ばれています。
境内の石灯篭には、京都の商人らしき名前が刻まれており、北前船の船主によるものだといいます。
神社の本殿の裏にある、耳を澄ませば海の音が聞こえるという「海音岩」です。
耳をそっとあててみると…聞こえたような聞こえないような…ぜひ試してみてください。
続いては、訓谷のパワースポット?沖野神社の裏側に立つ石造りの五輪塔です。
形や大きさの異なる5つの石が積み上げられており、下から地・水・火・風・空をあらわしています。
室町時代のものといわれ、保存状態が良く長年の間、風雨や地震などにも不思議と耐えているそうです。
但馬地域でもこれだけ保存状態の良いものは珍しいそうで兵庫県の文化財に指定されています。
五輪塔のすぐそばに、レンガ造りの橋脚があります。
1911年(明治44)に山陰線が開通したころから100年以上使われているそうです。
列車が通過するのを間近で感じることができて迫力があります。
沖野神社を出て元来た道を戻り、訓谷集落を歩くとあちこちに民宿があるのがわかります。
昭和40年代以降に海水浴ブームやかにすきブームがあったことにより次々と民宿が開業しました。
現在では訓谷地域に30軒以上の民宿があり、海水浴の時期や松葉ガニがおいしい冬場は、観光客でにぎわいます。
沖野神社へ行く前に右折した十字路を直進して、その次の交差点を右折します。
右手に佐津温泉の湯元である温泉配湯センターを見ながら直進すると、次なる目的地の光永寺へたどり着きます。
「光永寺」は浄土真宗のお寺で、1898年(明治31)に改築された本堂には、訓谷湾を描いた襖絵があるそうです。
境内にはきれいに選定された庭の木が面白い形をしていましたよ。魚の形でしょうか?
お寺の前には、あまりみたことのない飛び出し注意の看板が…なんと実写で子供たちの顔がプリントされています。
かわいらしくて、つい立ち止まってみたくなりますね。
この看板はテレビでも「リアルな飛び出し注意看板」として取材されるなど話題になったようです。
光永寺を出て右方向に5分くらい歩くと日本海へ出ます。
山のほうへと続く階段があるのでそこを登りましょう。
階段をのぼった高台に魚見台があります。
魚見台とは、かつて、訓谷地域の家計の大きな支えになっていた地引網が行われていたころの見張り小屋のことです。
見張り番は、魚群が跳ねるの見定め、白い旗を振りながら大声で合図をおくっていたそうです。
現在の魚見台は、観光用に復元されたもので、日本海を見渡す絶景スポットになっています。
実際の魚見台はもう少し高いところにあったようです。
魚見台からみた訓谷湾(佐津海水浴場)です。
浜に聞こえるためには相当大きな声をださないといけませんね…
それでは、砂浜のほうに行ってみましょう。
魚見台から降りたところから、大きな弧を描いた美しい砂浜が広がります。
夏場には、多くの海水浴客でにぎわう佐津海水浴場(訓谷浜)です。
駅から10分ほどで歩いて行ける海水浴場として人気です。
写真手前の魚見台側の砂浜は、砂粒が荒く、奥側の砂浜は砂粒が細かいとのことです。
砂浜を見ながら歩いているときれいな貝殻やシーグラスが落ちているのが見つかります。
ビーチコーミングも楽しめそうですね。
海水浴場の西側には、クロマツが群生しており防風林の役割を果たしています。
江戸時代からある松林ということもあり、立派な幹の松が多いです。
中には、戦時中に燃料としてマツヤニを採取した痕跡のある松もありました。
海岸の防波堤のコンクリートの隙間から松がでていました!!
こちらは、地元で「ど根性松」と名付けられ成長が見守られているそうです。
訓谷湾は、沖に波消しブロックが沈められておらず昔からの景観を今にとどめています。
海水浴が楽しめる夏場や松葉ガニの美味しい冬場はもちろん、それ以外の季節にも訪れた人たちの目を楽しませてくれます。
ゆっくりとした時間が流れる海辺の民宿街、佐津・訓谷はふと訪れてみたくなるような場所でした。