兵庫県豊岡市竹野町にある竹野地域。
江戸から明治にかけて、大阪と北海道の間を往来した北前船の寄港地として栄えた町です。
また、自ら船主となった者が多く、廻船業として栄えた町でもあります。
一方で、北前船で栄えるよりもはるか昔から川湊を中心とした町並みがつくられ、今もほぼ変わらず残っています。
それでは、北前船で栄えた面影を残し、焼き杉板で囲まれた巨大迷路と美しい川湊が魅力の竹野を散策してみましょう。
列車から降りると、最初に目に入るのが白い跨線橋です。
この跨線橋は、1911年(明治44)に神戸で製造され、1968年(昭和43)に篠山口駅から竹野駅へと移設されたものです。
明治時代の鋳物を使った柱脚の跨線橋は、八鹿駅の跨線橋とともに極めて珍しいといわれています。
竹野の玄関であるJR竹野駅に竹野駅観光案内所があります。
観光パンフレットや無料Wi―Fiが設置されていますので、情報を入手できます。
また、竹野駅から目的の散策地まで徒歩で20分ほどかかります。
このため、レンタサイクルの利用をオススメします。
詳しくはこちらをご覧ください。⇒たけの観光協会ホームページ
スタート地点であるJR山陰本線竹野駅舎です。
1911年(明治44)に建てられた駅舎で、駅舎の外に出て、壁を見上げると、「駅本屋明治44年10月」と書かれた建物財産標が残っており、歴史を感じます。
竹野駅を出ると海へ向かう道がまっすぐに伸びています。
レンタサイクルで海風を感じながら、直進して海を目指します。
途中、竹野川を渡り、ローソンのある交差点を直進し、竹野小学校前交差点も直進します。
竹野駅から自転車で5分ほど真っすぐに進むと、竹野浜に突き当たり、左手にたけの観光協会があります。
たけの観光協会では、竹野の観光に関する情報のほか、町並み散策ガイドの受付やレンタサイクルの窓口にもなっています。
竹野駅でレンタルした自転車は、一旦観光協会さんに預けて、ここからは徒歩で散策します。
また、巨大迷路のような町並みを思いっきり楽しみたい方は、ここで竹野浜路地裏マップを入手しましょう。
竹野観光協会を出ると、竹野浜が眼前に広がります。
竹野浜は、「日本の渚百選」や「日本の快水浴場百選」に選ばれ、毎年多くの人が海水浴に訪れる人気のビーチです。
江戸時代には、二百石以上の塩を納める塩浜として重要な地域とされてきたそうです。
また、左手には猫崎半島が見えます。
猫崎半島は、兵庫県最北端にあり、沖から見ると猫がうずくまっているように見えることから名づけられたそうです。
道路側から見るとキューピーが横たわっているように見えるため、地元の人からは「キューピー半島」と呼ばれ親しまれています。
また、竹野が北前船の寄港地として栄えたのは、猫崎半島が北西季節風を遮る天然の防波堤の役割を果たし、風待ちに適していたからだそうです。
竹野浜から観光協会さんを右に見ながら町中に入ります。
少し歩くと、右手になごみてぇさんがあります。
なごみてぇさんは、築約100年の古民家を改修した施設です。
赤ちゃんからおじいちゃん、おばあちゃんまで和むことができる、地域の人たちの交流の場になっています。
また、運営スタッフは全員ボランティアだそうです。
なごみてぇさんを出ると右隣にひととまるさんがあります。
ひととまるさんは、埼玉から移住したご夫婦が空き家を改装して営むちいさなお宿です。
1階は竹野や豊岡に縁のある人から「好きな本」というテーマで寄贈された本が置かれ、2階はゲストハウスになっています。
ひととまるさんを出て右手に少し歩き、左手の路地に入ります。
路地に入ると、伝統の技法による焼き杉板で囲まれた迷路のような町並みに遭遇します。
浜特有の塩分を含んだ強風雪から土壁を守るため、焼き杉板で家の外側を覆っており、独特の風情を醸し出しています。
このエリアは、土地区画整理が行われていないため、明治時代と同じ町並みが残っているそうです。
このため、港町特有の細い路地や迷路のような町並みを楽しむことができます。
いくつか撮影スポットをご紹介しますが、自分だけの撮影スポットをぜひ見つけてください。
北前船で財を成した船主邸が、今でも大切に保存されています。
船主邸、竹野浜に続くまっすぐな細い路地、焼き杉板、青い海と空・・・
思わず写真におさめたくなる、竹野の町並みの特徴を凝縮した1枚です。
海に近いにもかかわらず、真水をくみ上げることができ、貴重な飲料水だったそうです。
近年は、集落のいたるところに消雪工が設置され、雪を解かす水として活用されています。
家の基礎、壁、棟石などには、地元で採れていた凝灰岩「青井石」が使われています。
宝寿丸船主邸横の細長い路地を進んだところに鷹野神社があります。
突き当りを道なりに進み、神社の正面に回りましょう。
巨大迷路のような細い路地の町並みを散策していると、右手に鷹野神社が見えてきます。
鷹野神社は、昔から海岸を守る神社として信仰を集め、地元では、「浜の天神さん」と呼ばれているそうです。
また、竹野は北前船の寄港地であったこともあり、船霊社や方角石・御神燈などが残っています。
昔は、鷹野神社の本殿西側に10mの石垣をつくり、その上に方角石を置いていたそうです。
今は方角石だけが残っています。
円形の部分に干支を使って方角が刻まれています。
鷹野神社の交差点を左折して3分ほど歩くと、右手に御用地館が見えてきます。
御用地館(おようじかん)は、300年以上の歴史を誇る住吉屋の庄屋屋敷を復元した歴史資料館です。
伊能忠敬が全国測量の際に宿泊したことでも知られています。
土間の囲炉裏や中庭の土蔵を活用したギャラリーなどがあり、昔の佇まいを知ることができます。
また、竹野出身の書道家である仲田光成さんの作品展示館を併設しています。
詳しくはこちら⇒住吉屋歴史資料館ホームページ
ちなみに、御用地館という名前は、このあたりの地域の昔の呼び名から名づけられた通称です。
正式名称は「豊岡市立住吉屋歴史資料館」で、2021年(令和3)からは名称が変更されて「豊岡市立竹野川湊館」になります。
御用地館を右手に出て、すぐに右折します。
しばらく直進すると、オススメ撮影スポットの竹野橋に出ます。
竹野地域のオススメ撮影スポットは、竹野浜だけではありません。
竹野浜から少し川を遡った地域は、「川湊」と呼ばれ、水に浮かんだような美しい町並みを眺めることができます。
川湊の美しい風景をつくっているのは、伝統の技法でつくられた焼き杉板を外壁にした家々です。
竹野橋は、川湊の風景を撮影するオススメスポットです。
対岸の西町地域も焼き杉板の家が数多く見られ、美しい川湊の風景が広がっています。
竹野橋から川湊の風景を撮影したあと、川沿いを河口方面に歩いていると、立派な焼き杉板の家並みを間近に見ることができます。
北前船で栄えていた当時は護岸がなく、船を家の近くまで寄せて、荷物を2階から降ろしていたそうです。
さらに竹野川沿いに歩いていると、右手に但馬漁協竹野支所が見えてきます。
但馬漁協竹野支所では、2016年から港の魅力を知ってもらおうと、竹野港海町マーケットを開催しています。
漁港ならではの旬な食材の販売や漁船遊覧船などが企画され、大漁旗と漁業関係者の威勢のいいかけ声が飛び交い、漁師気分を満喫することができます。
開催日とのタイミングが合えば、ぜひ体験していただきたいイベントです。
詳しくはこちら⇒竹野港海町マーケットFacebook
先ほど竹野橋からの撮影ポイントを紹介しましたが、但馬漁協竹野支所から少し河口側に歩いた地点も川湊の風景を撮影するオススメスポットです。
川湊の風景を眺めながら、2分ほど歩くと、松林があり、その中に今回のゴール地点である北前館が見えてきます。
北前館は、北前船や山陰海岸ジオパークの資料館、温泉施設のある複合施設です。
日本海の雄大な自然を眺めることができる露天風呂もありますので、散策後の休憩にいかがでしょうか。
詳しくはこちら⇒北前館ホームページ
また、北前館では、ジオカヌーを楽しむことができます。
ジオカヌーとは、山陰海岸ジオパークをシーカヤックで巡る冒険ツーリングのことで、 誰でも手軽に出かけられ、少し海へ漕ぎ出せば非日常的な体験をすることができます。
なお、お帰りの際、レンタサイクルを竹野観光協会に預けられた方は、忘れずに竹野駅の観光案内所に返却しましょう。
時間と体力に余裕のある方に番外編として、ジャジャ山公園を紹介します。
北前館から竹野浜沿いに500mほど進むと但馬漁火ラインと呼ばれる道路に出ます。
そこを右折し、100mほど進むと左手にジャジャ山公園散策道の案内板が見えてきます。
ジャジャ山公園は、標高90mのジャジャ山の山頂にあります。
展望台からは、竹野の町並み、竹野浜、猫崎半島などを一望することができます。
散策の締めとしてオススメのスポットです。
北前船で栄えた面影、巨大迷路のような焼き杉板の町並み、細い路地の向こうに見える青い空と海、昔から変わらない美しい川湊の風景、ここにしかない魅力のつまったまちです。