今年の10月22日に、久美浜湾内で1羽のオオハクチョウを見つけました。羽が灰色の幼鳥です。おそらく、渡りの途中、親鳥とはぐれてしまったのでしょう。ときどき空を見上げてコーコーと寂しげに声を上げており、西の越冬地に向かう他の渡り鳥と合流できるよう願いました。
2日後の10月24日のことです。自宅近くの六方川の橋にさしかかったとき、なんと、真下にオオハクチョウ幼鳥がいるではありませんか。久美浜湾で出会ったのと同じである確証はありませんが、直線距離で13Kmしか離れておらず、状況からしても同一個体が飛んできたものと考えました。
六方川には越冬コハクチョウが時々入りますが、オオハクチョウが入ったのは私は初めて見ます。幼鳥とはいいながら、圧倒的に大きな存在感の水鳥です。同じ場所で、一日中、草をむしって食べていました。
夕方には水面に浮かんでまったり過ごしていましたが、翌朝以降、豊岡盆地内でこのオオハクチョウを見かけることはありませんでした。
1ヶ月後の11月21日、久美浜湾沿いの堪水田でオオハクチョウ成鳥2羽の飛来を確認しました。継続観察で、この2羽はここで越冬しそうな気配をみせています。
かつての久美浜湾はオオハクチョウの越冬飛来地として名が知られていましたが、近年はぱったりと来なくなっていました。今回、幼鳥1羽に続いて成鳥2羽が飛来し、オオハクチョウの久美浜湾での越冬も再び定着するかもしれません。
久美浜湾から近い豊岡盆地でも、コハクチョウに次いでオオハクチョウが越冬する可能性も将来的には考えられます。ラムサール条約湿地の円山川下流域が、さらに多様な生物生息環境になってゆけばよいですね。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信