たじまのしぜん

ニホンマムシ

有鱗目 クサリヘビ科  日本蝮     (Gloydius blomhoffii)

まむし、マムシ、ニホンマムシ、爬虫綱、有隣目、ヘビ亜目、クサリヘビ科、マムシ属、日本の代表的な毒ヘビ。誰でも名前ぐらいは知っているだろうし、少し山野を歩く人であれば見たことがあるだろう。しかし、マムシと一口に言っても見分けは難しい面もあると思う。

全長は40~60cm程度で胴体はずんぐりしているが、尾の部分になると急激に細くなる。胴体としっぽがはっきりわかる所が一つの特徴だと思う。他のヘビはどこまでが胴体でどこからがしっぽかよく分からない。色は黒~褐色~赤まで、黒マムシ~赤マムシと呼ばれるように幅広い。よって、色だけでマムシかどうかの判断は難しい。「マムシは毒ヘビなので頭が三角だ、」とよく言われるが、これも決定的な特徴だとは思えない。それほど三角に見えないし、他のヘビもそれなりにエラが張っており興奮するとかなり三角に見えたりする。地の色が濃い場合は見にくいかもしれないが、マムシの背面には20対前後の中央に黒い斑点のある銭形とも呼ばれる斑紋がある。マル書いてチョンの模様である。この模様はマムシの大きな特徴だと思う。アオダイショウの幼蛇もよく似た銭形が出るので紛らわしいが、ずんぐりした胴体と明確なしっぽを合わせて見分けると良いと思う。もうひとつ、マムシはどちらかと言うと大人しいヘビで、人が近づいても落ち着いていて、あまり逃げないように思う。他のヘビは人が近づくと大概は大慌てで逃げていくのだが、マムシは逃げてくれないので目の前にいるのに気が付いてびっくりしてしまう。

攻撃的ではないが威嚇してくることは珍しくないようだ。僕は今年初めてマムシに威嚇された。山道を歩いていると、すぐ前方で落ち葉を震わせるような音が聞こえた。かろうじて立ち止まり足元を見ると、すぐ足元にマムシが尻尾を震わせて威嚇している。マムシとはこれまで何度も遭遇したが、威嚇されたのは初めだ。威嚇音と小刻みに震えるしっぽに驚きながらも、飛び掛かられても大丈夫であろう2mほどの距離を取って、しばらく観察した。彼は逃げるつもりはないようで威嚇し続けている。しかし、これ以上近づかなければアタックしてくる気配もない。尻尾を震わせる様子はガラガラヘビを思い出す。道は十分に広かったので、彼に退いてもらうことはせず僕が迂回することにした。

マムシは朽ち木の陰や洞の中にもよく潜んでいる。そういう場所は変形菌のポイントでもあるので、変形菌の観察時に注意が必要だ。マムシは人を見て積極的に飛び掛かって攻撃して来るようなことは無いが、捕まえようとしたり目の前に手を出されたりすると噛みついてくる。だから、変形菌を探そうとして倒木の裏側に安易に手を突っ込んだりするのは危険だ。

もう20年ほど前の話であるが、私の不注意から身内のものがマムシに噛まれる事態が発生した。焼酎漬けを作るために捕獲したマムシが、ちょっとした不注意から脱走してしまった。それを捕まえようとしてマムシの首元を捕まえようと差し出した手を、振り向きざまに反撃されたのだ。当然の結果だろう。速やかに病院へ搬送し適切に処置がされたため事なきを得たものの、噛まれた手から腕にかけてパンパンに腫れ上がり、現代医療体制が無ければまずいことになっていたかもしれない。正確な統計数値ではないので恐縮だが、全国では年間約3,000件のマムシ咬傷の報告あり、0.1-0.8%程度が急性腎不全などで死亡しているらしい。身近に普通にいる毒ヘビだけに十分な注意が必要である。

その時作った焼酎漬けは既に年代物になっており、薬効も大いに期待できると思うが、今のところ封を切る予定は無い。

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