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カンボクツノホコリ

変形菌綱、ツノホコリ亜綱、ツノホコリ目、ツノホコリ科、ツノホコリ属 (Ceratiomyxa fruticulosa var. arbuscula(Berk.& Br.)Minakata) 灌木角埃

ツノホコリの仲間は、変形菌類の中でも普通に見かける代表的な種といえるだろう。その子実体は大きく白くよく目立つ。今回紹介するのは、ツノホコリの一変種であるカンボクツノホコリ。円柱の先端から放射状に分岐枝が出る型のものである。

 

灌木のような形のツノホコリ。美しい。見事な造形美だと思う。

上から見たところ。

 

 

ツノホコリの仲間についてはこれまでにも、以下の通り紹介してきた。

ツノホコリ     https://www.tajima.or.jp/nature/others/119439/ 2018.5.5

タマツノホコリ   https://www.tajima.or.jp/nature/others/119443/ 2018.6.3

エダナシツノホコリ https://www.tajima.or.jp/nature/134116/    2018.7.8

ナミウチツノホコリ https://www.tajima.or.jp/nature/135144/    2018.8.4

ざっくりまとめると、

子実体(担子体)は数㎜で1㎝に満たず白色で途中1,2分枝する基本形のものをツノホコリ、分岐枝が長くて曲がるものをナミウチツノホコリ、円柱状で分岐しないものをエダナシツノホコリ、ハチの巣状で球形のものをタマツノホコリといい、ツノホコリ及びその変種とされている。そして、前回の報告時点ではまだ確認できていなかった、円柱の先端から放射状に分岐枝が出る型のものが、今回紹介したカンボクツノホコリ。

これは、エダナシツノホコリ

 

 

ツノホコリ、エダナシツノホコリ、ナミウチツノホコリ、タマツノホコリ、そしてカンボクツノホコリ、これらは断続的ではあるが連続性があり、中間型が存在する。よってすべてツノホコリとその変種というのもうなずける。また、タマツノホコリのみ独立種として扱われることもあるとのことで、ツノホコリとの形態的な連続性にやや大きな隔離が見られるので、もっともな見方だと思う。ただ、ツノホコリを基本形とするよりもシンプルな形のエダナシツノホコリを基本とし、担子体の枝分かれや屈曲、扁平化やハチの巣・球形状などの変種があると考えるが自然なような気もする。

以下に、16枚の写真で、エダナシツノホコリから、担子体が伸び分岐枝が出たツノホコリ、さらに伸びたナミウチツノホコリ、一方で担子体が扁平化、集合球状化し、タマツノホコリへ向かう方向、一方で、集合し軸が伸びてその先から分岐しカンボクツノホコリへと向かう方向を掲載してみたい。断続的ではあるが、中間型があるということがわかると思う。

標準的なエダナシツノホコリ形か。

エダナシツノホコリ形だが、二股のものがみられる。

エダナシツノホコリ形だが、やや担子体が長い。

標準的なツノホコリ形か。

これも標準的なツノホコリ形か?先ほどのものよりも長い。

これは、標準的なナミウチツノホコリ形か?

これはナミウチツノホコリ形だが基部がまとまっている。

これは、ツノホコリ形だが基部がまとまり、少しだけタマツノホコリの雰囲気がある。

これも、ツノホコリ形だが基部がまとまり、少しタマツノホコリの雰囲気がある。

これはタマツノホコリ形だが、ハチの巣状には程遠く荒い。

これもタマツノホコリ形だが、先ほどのものよりも密である。

これはタマツノホコリ形で、ハチの巣状がかなり密である。

ハチの巣状がさらに密。

これはタマツノホコリ形で、基部が少しまとまっている。

基部はかなりまとまっており、ナミウチツノホコリとカンボクツノホコリの中間的な形のもの。

これは、カンボクツノホコリ形。

 

なお、北方系のツノホコリ類は黄色のものが普通にいるようである。写真でしか見たことがないが非常に美しい。また、桃色、青色の変種もあるようだ。残念ながら、但馬地域では白以外はまだ見たことがない。もしかすると、高原地域に黄色いのや他の色のものがいるかもしれない。ツノホコリはよく目立ち普通に見られるが、観察してみるといろいろな変種があり、それぞれが連続的であり奥深さを感じる。できれば白以外の色のツノホコリを但馬で見つけ、このシリーズの次回を掲載したい。

なお、他の変形菌類は子嚢の中に胞子を作るが、このツノホコリ類は担子体の外側に胞子をつけるため、ルーペで直接胞子の粒を確認することができる、他の変形菌類とは亜綱レベルで別の生き物ということである。これまでの投稿では、分類が多説あり「原生粘菌綱?」という表記をしていたが、今回は「図説 日本の変形菌 山本幸憲 東洋書林 1998」で採用されている分類体系に基づき「変形菌綱、ツノホコリ亜綱」とした。

 

追記 R2.7.8

今回、「ツノホコリの一変種」として、「カンボクツノホコリ」を紹介したが、これは、「日本変形菌類図鑑 平凡社 1995」の考え方に基づいている。実は、3年後に発刊されている「図説日本の変形菌 東洋書林1998年」には、「カンボクツノホコリ」は記載されていない。「カンボクツノホコリ」の形のものは「ナミウチツノホコリ」として扱われており、「ナミウチツノホコリ」の模式図として「カンボクツノホコリ」形と言って良いものが掲載されている。

現在の日本の変形菌類専門家の考え方の主流は「図説日本の変形菌 東洋書林1998年」と同じで「カンボクツノホコリ」という変種(品種)名は使わないようだ。そのため、近年たくさん発刊されている変形菌の書籍類に「カンボクツノホコリ」は見当たらない(と思う)。そして、ここで「カンボクツノホコリ」として紹介している形のものの写真が「ナミウチツノホコリ」として掲載されていることもある。

一方で、変形菌に興味を持った一般人が変形菌類の専門的図鑑を入手しようとすると、「日本変形菌類図鑑 平凡社 1995」を手に入れる場合が多く、そこには「カンボクツノホコリ」が「ツノホコリの一変種」として掲載されている。それを教科書として勉強するのだから、「カンボクツノホコリ」の名称はアマチュアの間で根強く生き続けているのではなかろうか。私だけのことかもしれないが、そんな事情があって少し混乱が生じているのだと思う。

最後に、変形菌というディープな分野に経験の浅い素人が私見を踏まえていろいろと好きなことを書いております。おかしな点などご指摘いただければ幸いです。

 

追記 R3.8.16

2021年4月30日に山本幸憲著「日本変形菌誌」が日本変形菌誌製作委員会より発行された。そこでは、カンボクツノホコリが復活している。なおツノホコリの分類は、ツノホコリ綱、ツノホコリ目、ツノホコリ科、ツノホコリ属とされ、エダナシツノホコリ、ツノホコリ、カンボクツノホコリ、ナミウチツノホコリ、キイロツノホコリ、モモイロツノホコリ、タマツノホコリ、キイロタマツノホコリ、モモイロタマツノホコリ、日本未記録4種に分類されている。ここでは報告時点での分類のままとしておく。

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