みなさん、こんにちは。
今回は「たじま未来づくり講座」の現地講座に参加してきましたので、その様子をお届けします。
2021年9月にオープンした、ホール、図書館、公民館、公園の機能を持った養父市民交流広場「YBファブ」。実は、グンゼ八鹿工場跡に建てられています。
今回の講座では、兵庫県景観形成地区に指定されている伝統的な八鹿の町並みと、その中に新設されたYBファブを、ガイドを受けながら散策しました。
おおまかに紹介しますと、
八鹿地区は、明治から昭和にかけて但馬の養蚕の中心地として栄え、生糸取引の商いで隆盛を誇った時代には「大正ロマンの漂うまち」と評されました。国鉄山陰線の開通、公共機関や学校の設置、郡是(グンゼ)製糸八鹿工場の建設などにより、八鹿の町並みは一気に近代化し、人口も急増しました。
それでは、YBファブから見学します。
ホールのステージに上がらせてもらいました。
ステージは奥行きがとても広い!
演者の方ものびのびと演じることができますね。
音響性能に優れた構造で、座席数は651席あります。
コンサートや演奏会などの音楽イベントもたくさん開催されています。
ここはリハーサル室です。鏡張りでとても開放的な空間です。
ここにも素敵なからくりが!
芝生広場に面した窓を開けると、野外ステージに変身!
芝生が客席で、リハーサル室が舞台となります。
明るい雰囲気の図書館です。
但馬地域の方なら養父市民でなくても本を借りることができます。
他にも、音楽スタジオや会議室、調理室、キッズルームなどもあります。まだ来たことのない人は、ぜひ足を運んでみてください。
続いて、YBファブの敷地内に残されている、旧グンゼ八鹿工場の事務所棟にやってきました。
この建物は、兵庫県景観形成重要建造物の指定を受けていて、洋風意匠の外観が景観と調和し、但馬における製糸業の近代化を象徴する建造物として高く評価されています。
この建物のおもしろいところは、建物の角に玄関があること。そして、なぜか玄関には2つドアがあることです。
事務所棟の向かいに守衛所があり、この屋根瓦「八鹿瓦」が要チェックです!
島根県の石州瓦の職人が、八鹿で瓦を焼いたことから「八鹿瓦」と言われています。土焼の陶器で、明治6年から昭和5年までの55年間という短期間の操業であったため「幻の焼き物」とも言われています。
特徴として、瓦の断面の模様がポイントです(写真の丸印のところ)。
拡大すると、このような文様があります。同じ八鹿瓦でも建物によって微妙に文様が異なるそうです。
少し山側に歩き立誠舎へ。
立誠舎は、江戸時代に但馬聖人と呼ばれた儒学者「池田草庵」が漢学を教えていた建物です。
池田草庵と言えば、宿南地区の「青谿書院」が思い浮かびますが、青谿書院を開く前に、ここ立誠舎で4年間、多くの人材を育成していました。
ちなみに、この建物の瓦も「八鹿瓦」です。
事前に八鹿地区自治協議会に連絡しておくと、建物内も見学させてもらえます。
続いて八鹿の町中を歩きます。
写真の丸印の部分が「うだつ」です。もともと防火壁の役割があったと言われ、軒を連ねた家並みの中で隣の家に火事が移るのを防ぐものだったようです。
それが城下町などの商家に多く使われたことから、商売が繁盛して経済力のある店の証明になり、「うだつがあがる」と言われるようになったそうです。
八鹿にはうだつのある建物が多く、製糸業や養蚕業を介して広まったと言われています。平成12年の資料では八鹿地区に29棟のうだつが確認されています。
ちなみに、屋根の上向きにあるものが「本うだつ」。壁のサイドにあるものが「袖うだつ」です。「本うだつ」の分布は、山陰地方では但馬が西端となるそうです。
八鹿ふれあい倶楽部の前に、「八鹿町道路元標」と書いた石碑があります。大正時代の標柱で、豊岡・鳥取・姫路を結ぶ結節点として、但馬交通網の重要な分岐点であったことがわかります。
続いて、すぐ近くの八柱神社にやってきました。
本殿の彫刻を見ると、正面中央に「獅子」、その上に「龍」、そしてサイドには「獅子」と「獏(ばく)」です。
鼻が長いのでてっきり象だと思っていましたが、これは「獏」だそうです。
もう一つ特徴的なのが狛犬。この神社の狛犬は、座っているのではなく後ろ足を立てていて、出雲型狛犬としてこの近辺では珍しいと言うことです。
なお、現地で確認できる部分は少ないのですが、大正時代に八鹿町日畑から八鹿駅まで「妙見杉の運搬用軌道」があったそうです。
木材を積んだトロッコが何両も連結され、動力ではなくトロッコの重みだけで、轟音をとどろかせながら疾走していたらしいです。そして、空になったトロッコは、馬が引いて出発地点まで戻っていたとか。
今ではとても想像できませんね。
他にも見どころはたくさんあるのですが、時間の都合上YBファブに戻ります。
YBファブ周辺は広大な芝生広場があり、お散歩や日向ぼっこ、ちびっこを遊ばせるのにもってこいです。
ちなみにYBファブの屋根瓦は、八鹿瓦の色調、焼成温度、釉薬の配合を調査し、特別に再現した瓦だそうです。
YBファブの柱に「八鹿瓦」の文様が再現されています。ちょっとした遊び心も楽しいですね。
YBファブに戻り、ガイドをしてくださった講師に色々とお聞きしました。
印象深かった言葉を記しておきます。
① 楽しくまち歩きをするポイントは、仲間と一緒に面白いと思うところ等の意見を交わしながら歩くこと。瓦や石碑等にも注目しながら、面白いものがあれば写真を撮り、新しい発見を探すつもりで。
② 古いものを見て心を磨くことが大事。見る側の人間の心が磨かれていないと「ただの古いモノ」で終わってしまい、興味を持つことがなくなる。古いものはお金を出しても買えない。
③ 人口が減少していく中で、個人の力で町並みを保存することは難しい。「代表的な町並みを残していきたい」という住民の意見を増やしていくことが大事。自分たちの地域の「誇り」を残していくことが、地域づくりにつながる。
ふだん何気なく歩いている町並みも、ガイドを受けて歩くととても楽しく、新しい発見がたくさんありました。
講師の話にもあったとおり「古いものを見て心を磨く」を意識して、クリエイティブ生きていきたいと感じたところです。
八鹿駅からの町歩きの詳しい記事がこちらにあります → うだつと大正ロマンの雰囲気を今に伝える町・八鹿を歩く
但馬の各駅の周辺散策記事です → たじま途中下車の旅ブログ
但馬各地の色んな所に出かけていって、知的好奇心を満たしましょう!