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歴史を伝える「あじわら小径」と温泉郷のまち・浜坂を歩く

「たじま途中下車の旅」~浜坂駅編~

兵庫県美方郡新温泉町にある浜坂地域は、地名からまちの成り立ちを知ることができます。
岸田川の運んだ土砂が波に打ち上げられてできた砂州は、周辺より高く、水はけがよいため、その上にまちが形成され、浜に坂のあるまち・浜坂と呼ばれるようになったとのことです。
陸路が発達する前は、漁業や北前船などの海運による商業で栄え、今でも当時の面影がそこかしこに残っています。
また、浜坂温泉の湯量が豊富なため、一般家庭にも配湯しており、自宅で温泉を楽しめる地域でもあります。
それでは、江戸時代からの風情が残る町並みと温泉郷のまち・浜坂を散策してみましょう。

①駅のホームから見える給水塔

浜坂駅は、鳥取県から延伸してきた山陰西線の終着駅として1911年(明治44)に開業しました。
当時は終着駅ということで、蒸気機関車の向きを変えるための転車台と給水塔が設けられました。
転車台は、山陰本線が開通したことで役割を終え、今は見ることができませんが、給水塔は、今でも当時の面影を残しています。

②浜坂駅駅舎

スタート地点であるJR山陰本線浜坂駅駅舎です。
現在の駅舎は、1959年(昭和34)に建てられたもので、正面にのれんがかけられている非常に珍しい駅です。
のれんには、開業時の駅名標である「濱坂驛」と書かれています。

歓迎の大看板

駅舎を出ると、まず目に入るのが、写真の大看板です。
「新温泉町」という名のとおり、温泉とゆかりのある町であることがわかります。
ちなみに、「浜坂温泉郷」は、浜坂温泉、七釜温泉、二日市温泉の3つの温泉の総称で、環境省が指定する国民保養温泉地に兵庫県で唯一指定されている温泉です。

④浜坂駅前「温泉塔」

鉄子の部屋を出て、右手には、大きな岩が見えます。
これは、浜坂温泉郷をイメージした温泉塔で、町内3箇所に建てられた温泉塔の1つです。

⑤浜坂駅前「足湯」

温泉塔の後ろには、木造平屋建、瓦葺きの足湯があります。
屋形船をイメージしたつくりで、お湯は、泉源から直接引き、掛け流しとなっています。
10~18時まで無料で利用できるので、気軽に温泉気分を味わってはいかがでしょうか。
ただし、水曜日は定休日なのでご注意ください。

⑥まち歩き案内所「松籟庵」

浜坂駅の横断歩道を渡り、左手に見える建物が、まち歩き案内所「松籟庵」(しょうらいあん)です。
100年前に浜坂駅開業とあわせて建築された店舗をリニューアルされたそうです。

開館時間 午前9時30分~午後5時30分
休館日  毎週水曜日

中に入ると・・・

中に入ると、浜坂や湯村の観光案内パンフレットやチラシ類が置いてあり、様々な情報を入手できます。
また、予約制ですが、散策ガイドもしてくれます。
ガイドの浜坂なまりが一押しポイントとのことです。

レンタサイクル

また、自転車をレンタルすることができます。
詳しくはこちらをご覧ください。⇒新温泉町ホームページ

蓄音機の音色鑑賞会

奥の蔵には、蓄音機が展示されています。
松籟庵の方に声をかけると、無料でレコード鑑賞会を開いてくれます。
「浜坂」と「蓄音機」
2つを結びつけるものがありました。
浜坂の伝統産業は、浜坂みすや針です。
浜坂みすや針で培われた伝統の技が蓄音機の針やレコード針に応用され、今に受け継がれています。
ちなみに、レコード針の一貫生産では国内唯一のメーカーが浜坂にあり、レコード針の製造依頼が世界中からあるそうです。

三叉路を右方向へ

松籟庵を出て、左方面に2分ほど歩くと、三叉路に出ますので、ここで右方向に進みます。

浜坂駅北交差点を右へ

三叉路を右方向に2分ほど歩くと浜坂駅北の交差点に出ますので、ここを右折します。

左折ポイント

浜坂駅北の交差点を右折し、少し歩くと右手に鳥取信用金庫が見えてきます。
浜坂は、位置的には兵庫県ですが、生活圏は鳥取県なのでしょうか。
左手のナカケー白河店の案内板と同じく左折します。

あじわら小径入り口

80mほど歩くと、「あじわら小径」と呼ばれる遊歩道と交差するので、左折します。

⑦あじわら小径

あじわら小径は、浜坂の市街地を流れる味原川の下流約500メートルにわたる川沿いの散歩道です。
味原川周辺は、漁業や北前船などの海運による商業で栄えた浜坂の歴史と文化の空気が今でもよりよく残っています。

時代によって異なる石垣

あじわら小径から見える対岸の石垣は、積まれた時代によって、野面積み、亀甲積みなどさまざまです。
概ね下流から上流に向かって、つくられた年代が新しくなっているそうです。
今回の散策ルートでは、進むにつれて、石垣の年代が古くなっていきます。
石垣の変化で時代の移り変わりを観察していくのも楽しみ方のひとつです。

川から荷物の上げ下ろし

味原川は、かつては水深の深い川であったことから、高瀬舟が通い、味原川沿いには、大型の商家が軒を連ね、川から荷物の上げ下ろしをしていたとのことです。

当時の面影を残す風景

今でも、旧家や古い石垣をはじめ、井戸、揚げ橋、水神様、船着場など、当時の面影が数多く残っており、廻船業で栄えていた頃の風情を楽しむことができます。

⑧加藤文太郎記念図書館

あじわら小径を散策していると、右手に加藤文太郎記念図書館が見えてきます。
浜坂出身の登山家「加藤文太郎」を顕彰して建てられた図書館で、建物全体が山をイメージしたつくりとなっています。
加藤文太郎の遺品や資料を展示しているほか、山に関する図書を数多く所蔵しています。

⑨浜坂温泉の源泉塔

再び、あじわら小径に戻り、少し歩くとT字路に突き当たります。
T字路を左方向に進むと浜坂温泉の源泉塔があります。
浜坂温泉の源泉塔には、「温泉さんありがとう」と書かれたモニュメントとかわいい石地蔵を見ることができます。
浜坂駅前の温泉塔と同じく、町内3箇所に建てられた温泉塔の1つです。
ちなみに、もう1つは、新温泉町役場に設置されています。

⑩西光寺の赤煉瓦塀

さらに進むと、左手に西光寺の赤煉瓦塀があります。
お寺に珍しい赤煉瓦塀ですが、これは浜坂地域の鉄道開発と関係があるとのことです。
山陰線の工事の際、余部から久谷間の桃観トンネルは、難工事のため多くの殉職者がでました。
1911年(明治44)の桃観トンネル完成後、民族の区別なく、工事で亡くなった人の弔いをされた住職に対し、工事関係の方が赤煉瓦塀を寄進されたとのことです。
フランス積みという方法で、坂道に沿って階段状に作られた赤煉瓦塀は、とても目を惹きます。

小さな発見

散策の途中で、珍しいものを見つけました。
家庭で見かける量水器(水道メーター)ですが、1つの家庭に2つあります。
よく見ると、左が「温」、右が「水」と書かれています。
地元の方に伺うと、浜坂では全国的にも珍しい家庭への配湯が行われているため、水道水と温泉水の2つの量水器がついているとのことでした。
浜坂の人にとって、温泉が身近な存在であることを実感する発見でした。

⑪浜坂先人記念館「以命亭」

赤煉瓦塀を過ぎて左折し、少し歩くと、今回の散策のゴールである浜坂先人記念館「以命亭」に到着します。
浜坂先人記念館「以命亭」は、森家・七釜屋屋敷を改修したもので、玄関には七釜屋の家紋を染めぬいたのれんがかかっています。

入館料  大人200円 小人100円
開設時間 午前9時~午後5時(入館は、午後4時30分まで)
休館日  毎週木曜日(その他、年末年始等に休館日あり)

のれんをくぐると・・・

のれんをくぐると当時にタイムスリップしたかのような雰囲気を味わうことができます。
中には、吹き抜けの酒蔵を利用した以命亭ホールなどがあり、浜坂の先人たちが紹介されています。

散策を終えて

今回は、廻船業で栄えていた頃のまち並みと温泉を中心としたルートをご紹介しましたが
浜坂駅周辺には、ほかにも見どころがたくさんあります。
次回は、麒麟獅子舞、漁業などのテーマで紹介したいと思います。
散策してみると、浜坂の歴史と文化の空気がよりよく残されていることが分かり、地域の方々の文化を守り伝えていく心意気が感じられるまちでした。

 

たじま途中下車の旅~浜坂駅編~散策マップ

 

 

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