トキホコリ イラクサ科
この植物が兵庫県で初めて採集されたのは、おそらく1955年の7月のことです。発見者である上坂規知郎氏の作られた標本のラベルにそう書かれています。ただし、植物名は、ヤマトキホコリとなっており、発見当時はトキホコリであるとは認識されれていなかったことが分かります。
以後、兵庫県では、その自生地以外では生育が確認されいてません。
トキホコリは、北海道から関東地方にかけて生育する植物ですが、離れて富山県や、静岡県でも生育が知られています。兵庫県で発見されて、静岡県までだった分布の西限が大きく動きました。その後に三重県でも生育が確認されています。
よく似た植物には、ウワバミソウとヤマトキホコリがあります。
トキホコリは、他の2種に比べて小さく、茎に開出毛(茎に対して直角に生える毛)があります。
トキホコリ ;10から20cm
ウワバミソウ ;30から40cm
ヤマトキホコリ;20から40cm
兵庫産のものは明らかに小さく10cmに達しないものが大半です。
ウワバミソウ、ヤマトキホコリは、山地の植物ですが、トキホコリは、もともとは河原のアシ原などに生え、夏の洪水の攪乱によって発芽し、秋に花を咲かせる生活史を持っているとされています。
幸いなことに、兵庫のトキホコリは、生育地をお持ちの方に大切に保護され、旺盛に生育しています。