少し前の話題になりますが、本年2月2日、豊岡盆地内の雪の冬期湛水田で2羽のマナヅルの飛来を初認しました。2018年の暮れに単独で越冬飛来して以来の記録ですが、まったく同じ地区の湛水田に飛来したというのがたいへん興味深いです。
今回は2羽での飛来ですが、越冬飛来にしては時期が遅すぎる気がします。鹿児島県出水市は、大陸のマナヅルの多くが越冬飛来することで知られますが、2月中旬には順次、北帰行に旅立つようです。今回の観察事例、北陸地方で越冬していたこの2羽が、強い寒波に押されて、当地まで退避してきたという可能性も考えられます。
前回ここで掲載したケアシノスリと同様、早い段階で飛来情報がインターネットで拡散され、地元車以外の観察車が、ケアシノスリの時ほどではないものの、連日やってきました。
この2羽、体の大きさに大小の差異がみられ、大きい方がオスで小さい方がメスと思われました。コウノトリよりひとまわり大きな鳥で、世界で6,000羽ほどしかいない絶滅危惧種です。このあたりでは、山陰西部に時々飛来する以外、但馬地方への飛来はまれです。
この写真を撮影した3月5日が、今回飛来したマナヅル2羽の終認日となりました。翌日から2羽の姿を見ることはありませんでした。2月2日から3月5日までの約1ヶ月間、マナヅルが豊岡盆地に滞在したことになります。
マナヅルは大きな鳥で、遠くからでも肉眼でその存在を確認することができました。白とグレーのツートンカラーに、目の周りの赤のワンポイント。シックでお洒落な美しい大型の水鳥です。コウノトリと同じく、シベリアの大湿原がふるさとです。
後日談ですが、この2羽は、日本列島を夏から冬にかけて縦断したことが分かってきました。昨年8月に北海道の旭川で目撃され、その後、冬にかけて石川県、福井県と南下して来たようです。GPSセンサーも足環も装着していませんが、大きい方のオスの左翼次列風切の2枚が、この写真の丸印のように白化しているのが識別ポイントになっていました。
このような、大型の鳥に明瞭な識別ポイントが出ている場合、滞在先で撮影された写真レポートを追っていくと、移動ルートが分かって来て興味深いです。夏に北海道で見つかったということは、ひょっとしてこの2羽は、北海道で繁殖している、あるいは繁殖しようとしているカップルなのかもしれませんね。