10月後半、渡り鳥が一斉に南に動いています。ツバメがトラクターで田起こししているところに群れ飛ぶ様子を見ますが、渡りの移動グループが飛び出してくる虫を捕まえているのでしょう。
ツバメのように目立つ鳥なら、だんだんと数が少なくなって行く様子を見て、南に渡って行ったことも知ることができます。しかし、渡りをする小鳥の多くは、できるだけ目立たないように身を隠しながら、ひっそりと移動しています。特に今年生まれの幼鳥にとっては初めての長旅です。天敵にやられないよう、静かに、深く潜行しながら動いています。
今回紹介する鳥もそんな仲間のひとつ。スズメ目ムシクイ科のオオムシクイです。一目見てウグイスと違うの?と思われた方、実は私もフィールド観察中、ウグイスかなあと思って見ていました。
ムシクイ科に属する野鳥は、かつてはウグイス科に分類されていました。ウグイスと似ているのは当たり前です。最新の分類ではウグイス科から独立してムシクイ科ができ、いくつかの種が所属するようになっています。
ムシクイ科の仲間の識別はとても難しく、長い間鳥見をしてきた私自身でさえ、まだまともに識別ができません。特に、繁殖を終えて渡りの途中に観察するムシクイの仲間の識別は難しい。
この写真のムシクイも、最初はメボソムシクイとしていたのですが、その後の検討やベテランバーダーのコメントから、オオムシクイに修正したものです。外見がほとんど同じで明らかな識別点がありません。繁殖期には鳴き方の違いから、ムシクイの識別も容易ですが、鳴かない今の時期はお手上げです。
上から見るとこんな感じの鳥です。いくつかの小さな特徴点を総合して、オオムシクイとしました。皆さんも図鑑やネット情報でムシクイの仲間の識別ポイントをチェックされたらいいですが、フィールドで姿を見ただけでは、なかなかすぐには判別できません。
今回の観察地は円山川下流域のヨシ原です。この場所は環境省の鳥類標識調査(バンディング)の定点にもなっており、今の時期にはコヨシキリ、ノゴマなどと共に、昼間はヨシ原の中で静かに過ごし、休息と餌の補給をしたあと、次の中継地へと動いて行きます。彼らのゴールは東南アジア諸国。秋の長旅はまだまだ続きます。