2010年の秋、豊岡市周辺の休耕田の水たまりでコガタノゲンゴロウが採集されました。周辺を調査したところ、休耕田やため池で複数個体が確認され、単なる偶産ではないと思われました。
コガタノゲンゴロウは、かつては環境省のレッドリストでは絶滅危惧Ⅰ類、兵庫県では絶滅種になっていました。全国で減少が著しく、まさに絶滅寸前の種でした。豊岡市でも1976年の記録を最後に姿を消してしまいましたが、これは兵庫県でも最後の記録です。絶滅は農薬が大量使用された時期とほぼ一致します。
2010年前後、時を同じくして。兵庫県の南西部のため池でも再発見され、さらに西日本各地で記録が見られるようになりました。コガタノゲンゴロウは個体数が回復傾向にあることがわかってきました。このような状況を踏まえて、2012年の環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類、兵庫県のレッドリストでもAランクの絶滅危惧種に下方修正されました。各地で減少している大型のゲンゴロウ類が増加に転じていることはとても珍しいことです。
コガタノゲンゴロウは休耕田の水たまりや水路、池などに生息します。豊岡市内各地のビオトープでも見つかることがあります。
コガタノゲンゴロウは黄色の縁取りがあるなどゲンゴロウ(紛らわしいのでタダノゲンゴロウともいう)によく似ていますが名前の通り小型で、腹面はゲンゴロウが黄褐色であるのに対し黒褐色です。日本では関東地方以西に、国外では台湾・中国・朝鮮半島にも分布します。暖かい地方のゲンゴロウで寒冷地では越冬が難しいといわれています。飛翔能力が高く、越冬できない地方でも、夏には多くの個体を見ることがあります。豊岡で越冬しているかどうかはまだわかりません。