クロイチゴ バラ科
これはクロイチゴです。日本のキイチゴで黒い実がつくものはクロイチゴしかありません。といって日本で黒いキイチゴを見てクロイチゴと断定してはいけません。ブラックベリー(セイヨウヤブイチゴ)という栽培種があります。時々見かけます。ちなみにクロイチゴは、ブラックベリーではなくてラズベリーというキイチゴの仲間になります。というのか、日本産の全てのキイチゴはラズベリーの仲間です。
果実を外したときに基部に空洞ができていればラズベリーです。ラズベリーは台座に果托が残るのでその分の穴ができますが、ブラックベリーは集合果と果托が一緒に取れるので穴はできません。果実が大きくて分かりやすいコジキイチゴの写真を載せています。このキイチゴ、大きいですが不味いです。
枝の様子も違います。ラズベリーは直立した枝になりますが、ブラックベリーはつる状に長く伸びます。
この株を見つけたのは2021年です。この年に確認されていたのはこの山系では2株だけでした。2023年現在、合計3つの山系でも生育が確認されていますが、個体数は非常に少ないままです。
6月28日
2023年度、初めての巡視です。目印のテープが取れてしまったようでなかなか見つかりません。見つけると、なんと、果実がついていました。なんとしても完熟させて種子を採取しなければいけません。幸い車には、わずかですが資材が載っています。被陰している植物を取り除いてから囲いました。
7月20日
熟しているか見に行きました。赤くなっていました。赤く色づいていれば他のキイチゴなら熟しているものもあります。しかしクロイチゴでは全くだめです。この赤い実はよく目立ちます。それが幸いしてもう一株見つけることができました。こちらの方が状態の良い果実がついています。
8月11日
さすがにもう熟しているだろうと見に行きました。期待していた株の方は、だめでした。干からびています。熟してから乾いたというような感じにも見えません。少雨で弱ったのでしょうか? 囲ってある株を見に行きました。熟していました。早速味見をしました。酸っぱいですが美味しいです。果肉をつぶして果汁を味わって、種子を潰さないように取り出して不織布に載せます。種子を博物館に送ろうと思います。数果実を味わって、あとは残しておきました。
これまでの観察から果実のついている枝は、多分、枯れると思います。
ここのクロイチゴは、2株共に果実のついている株の横から新しい枝が地面から出ていました。なので来年も枯れずに残ることは間違いないと思います。動物たちが果実を食べて種子を運んでくれると思います。そちらも期待しています。