植栽のソヨゴの幹に泥のかたまりが塗りつけられ、だんだん大きくなって行きます。この左官工事を行っているのはスズバチというドロバチの仲間。この仲間は、人家の壁や軒先などに泥の巣を作ります。産卵の前に、この泥の巣の中に毒針で動きを麻痺させた青虫を運び込みます。十分な量の青虫が確保できると、スズバチは巣内に産卵管を刺し入れて卵を産みます。卵から孵った幼虫は、生きた青虫を餌にして成長して行きます。
スズバチが巣材の泥団子を運んできました。巣には青く光り輝く、美しい別のハチが止まっています。青いハチの名前をオオセイボウといいます。漢字で「大青蜂」と書けば、名前の由来がよくわかります。大きい、青い、蜂。
オオセイボウの青い色は、構造色と呼ばれる昆虫の発色の特徴のひとつ。実際に体の色が青いわけではなく、細かいくぼみが光を反射して、青から緑の美しい色に光るのです。タマムシの色もこの構造色です。
オオセイボウがスズバチの巣に寄って来たのは、スズバチの巣に自分も産卵するためです。オオセイボウは寄生バチと呼ばれる仲間で、孵化した後は、スズバチの蓄えた青虫を食べて幼虫が成長します。寄生という方法で子孫をつなぐ方法を選んだハチの一種です。
家主のスズバチはオオセイボウの産卵を阻止しようとタックルを仕掛けますが、オオセイボウは固い体を丸めて攻撃をかわします。空中戦にもつれ込むこともしばしばですが、スズバチとオオセイボウと攻防はしばらく続きます。
産卵を終えたスズバチとオオセイボウは、その後、この巣に姿を見せることはありません。卵から孵った2種の幼虫は、スズバチが運び込んだ青虫を食べながら冬を越し、次の春に羽化します。