毎年春になると、アユの稚魚が海から遡上を始めます。今年も但馬の川にアユが遡上してきました。
アユは川に棲んでいる魚ですが、稚魚の一時期を海で過ごします。寿命は1年でして、秋に川で産卵をします。生まれて間もない稚魚は海へ降り、春まで海で過ごします。5月頃になると川への遡上を始めます。このように淡水魚でも稚魚の一時期を海で過ごす魚を両側回遊魚と呼びます。
遡上を始める頃には5~10センチほどの大きさになっています。川に遡上してすぐの頃はイワシのように銀色ですが、しばらくすると、この個体のように緑色に変わってきます。見えづらいのですが、背びれと尾びれの間に小さな脂びれがあるのが分かるでしょうか。この脂びれはサケ目の特徴でもあります。以前アユはキュウリウオ科に分類されていましたが、現在ではアユ科に分けられました。
稚魚期、海では動物プランクトンを食べます。川を遡上する時は水生昆虫を食べるようになり、川で定着すると川底の石に付着したコケ(珪藻類)を食べるようになります。
群れをなして遡ってきます。この頃は群れで行動していますが、川に定着するとなわばりを持ちます。近年、遡上するアユの量が減りつつあるのですが、その原因として、産卵場所となる河川環境の悪化や、冬場の海水温の上昇が影響しているという説もあります。
こちらは堰を飛び越えるアユです。最近の堰には魚道が設置されていることが増えてきたのですが、魚道が整備不足で機能していなかったりすると、アユは堰を飛び越えなければなりません。この3枚の写真は飛び越えようとして失敗してしまったところですが、実はここにはもう1匹写っています。
こちらは少し拡大した画像ですが、赤丸の中にアユが写っています。堤体上部の急流の中をアユが進んでいます。かなり速い流れですが、こんな中でもアユは進んで行きます。この堰で観察していると、10回のジャンプで1回ほどの割合で堰を乗り越える個体がいました。
産卵できる良好な河川環境と、稚魚期の成育場となる海の環境を回復させれば、自然繁殖したアユがたくさん棲んでいる豊かな川がよみがえるかもしれません。
写真・文 コウノトリ市民研究所 北垣和也