ヌマチチブは川の中流域から下流域に棲んでいるハゼの仲間です。こげ茶色のずんぐりとした体形の魚です。大きさは10センチ前後です。よく似た種類でチチブがいますが、チチブは下流~河口域の塩分のある場所を中心に棲んでいます。チチブについては、2015.11.30の記事をご覧ください。https://www.tajima.or.jp/nature/animal/119321/
棲んでいる場所は基本的には異なりますが、同じ場所にいることもあります。両者はよく似ており、見分けるには細かい点を見る必要があります。
チチブは背びれの筋が糸状に伸びて、顔の白い点々模様が多い傾向にあるのと、胸びれ付け根の模様は黄色い斑紋のみです。これに対し、ヌマチチブは背びれの筋が伸びるのはオスのみで、顔の白い点々模様はまばらになる傾向で、胸びれ付け根の黄色い斑紋の中に橙色の筋模様が入ります。
こちらは前掲の写真とは別の川で撮ったものです。胸鰭の橙色の筋がよくわかります。
チチブ
こちらはチチブです。胸鰭は黄色い模様だけです。また、背びれの筋が長いです。
ヌマチチブ
1枚目と同じ写真、ヌマチチブです。
この個体は白い点々模様が割と多く、どちらなのか迷うところですが、胸びれ付け根の赤っぽい筋模様と、背びれの筋が短いことからヌマチチブだとわかります。
こちらの個体は白点の密度が低く、ヌマチチブらしい姿です。白点の密度はこれくらいが平均的のように思えます。
雑食性で、小さな水生動物や藻類を食べます。石がごろついている場所を好むようです。撮影のために近づくと、この写真のように石の隙間など物陰に隠れます。
ヌマチチブは両側回遊魚でして、川で産卵・ふ化した後、すぐに海へ下り、しばらくして川に戻ってきます。
写真・文 コウノトリ市民研究所 北垣 和也