春と秋の渡りの季節、川べりで稀に出会うことがある風変わりな鳥がアリスイです。いつもいる鳥ではないですし、渡り途中の通過個体をたまたま目にするくらいなので、ほとんどの人は見たことが無いと思います。
地面におりて、その名の通りアリを吸い取るように食べ、時々ひょこっと木の枝に飛び上がってくるときが観察チャンス。枝に隠れてよく見えなかったり、シャッターを押す前に逃げてしまったりで、なかなか撮影が難しい相手です。この秋、円山川の河川敷でようやくアリスイをじっくり観察できました。
ベージュ系の鱗模様の地味な羽根色です。首が長く、アリを絡め取るための長い舌を持つのが特徴。実はこの鳥、キツツキの仲間なのです。木をつついて、中の虫を掘り出すといった餌の採り方はしない、風変わりなキツツキです。
この写真はあくびをしたのか、大きく口を開けたとき、舌の先端が少し見えています。アリスイの体長は18cmくらい。モズと同じくらいのサイズです。さて、舌の長さですが、10cmもあるいといいます。体の半分より長い舌を持っていて、これをヒョロっと伸ばしてアリを絡め取ります。まだ捕食の現場を見たことがないのですが、いつか、長い舌を伸ばしたアリスイを見てみたいものです。
アリスイはヨーロッパから極東アジアに至るまで、広く分布しています。長い首をクネクネさせて警戒し、10cmもある長い舌をチロチロさせる行動から、特にヨーロッパでは古くから気味の悪い鳥としてみられてきました。学名はJynx torquilla。このジンクスという言葉が「凶兆」の表現として広まったのが、実はこのアリスイに由来しているのです。
アリスイは日本では東北から北海道にかけて繁殖しています。当地では渡り途中の旅鳥の認識なのですが、なかなか見つけることが難しい鳥なので、ひょっとしたら当地でも一部越冬するものがいるのかも知れません。ただし、アリが採れなくなるような積雪が続けば、餌を求めて雪のない地方へ移動してしまうのでしょう。
たまたまアリスイに出会えたら、「凶兆」どころか、「ラッキー!」と思わすにはいられません。