ミサゴは兵庫県レッドリストAランク種に指定されていますが、私達の住んでいる但馬エリアでは、Aランクの絶滅危惧種とは意識できないほどに、よく見かけるタカです。円山川の下流域では特によく目にする白いタカで、他のタカと見間違えることはありません。
広げた翼から下側は白一色で、特に脚は白いタイツを履いているように、腿から指まで真っ白です。これには理由があります。ミサゴは魚食専門のタカです。川の上を巡回飛行しながら、獲物が水面近くに浮かんで来ているのを見つけると、その場でホバリング(空中停止)してダイブのタイミングを狙います。この時、黒い鳥の影が水中の魚から見えると、魚は危険を察知して水中深くに逃げてしまうでしょう。ミサゴの白い下面は、空の色に溶け込んで、魚に気づかれないようにするためと考えられます。
ミサゴのダイビング時の連続写真です。ホバリングから獲物を捕捉すると、ミサゴは真っ逆さまに水面に急降下します。しかし、そのまま頭から水中に突っ込むことはありません。水面の直前に翻(ひるがえ)り、脚をまっすぐ伸ばした状態で水面近くの獲物に突撃します。大きな水音と共に、ミサゴは鋭い鈎爪(かぎづめ)で獲物の魚をガッシリ捕まえます。大きな獲物を掴んだときは、相手が弱るまで、握力を強めて締め付けます。
あまりに大物を捕まえた場合、食い込んだ爪で自身が離脱不能になり、逃げる魚の泳力に負けてミサゴが水没し溺れ死んでしまうこともあるそうです。
円山川河口でボラを捕まえたミサゴです。大きなコイやフナ、海辺でも様々な大きな魚を捕まえまる狩りの様子は、実に見事なものです。大物を捕まえて運ぶとき、ミサゴは必ず魚の頭を先に前後を掴んで飛びます。空気抵抗を減らして、安定的に大きな魚を運ぶための姿勢です。
ミサゴは1年を通して観察できる「留鳥」です。餌生物が魚専門という、他のタカとは違う生態を持つため、タカ目ミサゴ科というタカ科とは独立したグループに分類されます。円山川水系でミサゴをよく見かけるということは、兵庫県でもこの流域がミサゴの狩場として適しているということ。ミサゴがいつまでの当地で暮らして行けるよう、美しい川環境を守り続けていきたいものです。
ちなみに、ミサゴの英名はOspreyです。オスプレイ。垂直離着陸できることから命名されたのでしょう。オスプレイと見聞きしたら、これからはミサゴのことを思い出してください。