秋の深まりとともに、河川や海辺でよく目立つようになるカモの一つです。緋鳥の名の通り赤い頭をしているのが特徴で、他のカモと見間違えることの少ない種でしょう。赤い頭のカモには汽水域に多く飛来するホシハジロがいますが、ヒドリガモの赤い頭の中央には、クリーム色の明瞭なラインが入ります。赤い頭にクリーム色のライン、これがヒドリガモの特徴です。
写真の手前がヒドリガモのオスで、左奥がヒドリガモのメスです。メスは他のカモと同様、全身褐色の地味な羽根色をしています。オスとメスのくちばしに注目してください。灰色のくちばしの先端が黒いという特徴は、オスとメスに共通です。メスの見分けはこのくちばしを観察することで可能です。
ヒドリガモは主に淡水にいますが、汽水域や海でも見かけます。海辺で波に揺られながら休んでいる姿もしばしば観察できます。遠くて羽根やくちばしの特徴が捉えられないときは、鳴き声に耳をすませましょう。「ピユーー」と語尾を伸ばす特徴的な鳴き方を覚えれば、声だけでヒドリガモの存在がわかるようになります。
ヒドリガモはユーラシア大陸の寒冷地で繁殖します。北アメリカの寒冷地で繁殖する類似種にアメリカヒドリがいます。この写真がアメリカヒドリです。ヒドリガモの越冬群の中に、少数のアメリカヒドリが混じります。カムチャツカ半島周辺はユーラシア大陸のヒドリガモと北アメリカのアメリカヒドリの両種が繁殖している場所です。北アメリカ大陸南部で越冬するはずのアメリカヒドリが、日本に向かう越冬群に紛れ込んでやってくるということです。当然、繁殖地では両種の交雑も起こり、アメリカヒドリの特徴を残したヒドリガモも、こちらの冬のカモ観察でしばしば経験することです。