雪深い渓谷の集落を抜け、除雪の終点で折り返したとき、地上から茶色い小鳥が木の枝に飛び上がってとまりました。ミソサザイによく似ていましたが、それにしては大きめの鳥です。ちょうどスズメくらいの大きさでした。前かぶりの枝がじゃまで、車の中からは撮影ポジションがとれません。助手席に寝転がるようにして、ようやくギリギリで顔が見えました。
顔は枝に隠れていますが、胸から腹部にかけてと尾羽の様子が分かる写真です。この地味な鳥の名はカヤクグリといいます。兵庫県レッドリストでAランクに指定されている希少種です。兵庫県では六甲山系で冬鳥として安定して観察される種だそうです。但馬では、氷ノ山・扇ノ山山系で少数が繁殖しています。私も、繁殖期の山歩きで、カヤクグリの囀りを聞いたり、笹薮の間にチラっと姿を見つけることがありました。
写真撮影できたのは今回は初めてです。潜行性の強い鳥なので、姿を見る機会がほとんどないのです。おそらく、但馬の高い山で暮らしている個体が、越冬期には里におりてきているのでしょう。こういう季節移動をする鳥のグループを漂鳥といます。モズなどもその仲間です。
今回は雪が深く、餌を求めて人家近くに姿を出したところに出くわしました。カヤクグリという謎の多い山の鳥は、冬の間は里の下りてくることが分かった一瞬の出会いでした。