サビムラサキホコリ、単子嚢体型、束生し、有柄で高さ7～20㎜。子嚢は円筒形でふつう先端と基部は狭まって鋭先型、鉄錆色から赤褐色。柄は黒色で光沢があり子嚢体の高さの半ば程度まで。軸柱は上方に漸細し、子嚢の先端近くまで達する。
細毛体は軸柱の全体から出て、内網に拡大部がある。表面網は角張り、ほぼ均一な太さで刺はほとんどない。
胞子は直径5～7µmで微かな疣型でほとんど疣は見えない。
春～秋に腐木にふつう。

変形菌は小さくて目視で見つけることは困難なものが多いが、ムラサキホコリ属の仲間は大型のものが多く、このサビムラサキホコリも子実体が１cmを超えることが普通なので、発生しているところに出くわせば比較的簡単に発見することができる。また、その名の通り錆色～赤褐色が特徴的である。

顕微鏡で拡大して観察すれば、細毛体が形成する表面網が平面的でしっかりつながっていて、ムラサキホコリ属の特徴を確認することができる。

胞子は5～7µmと小さめで、微かな疣状とのことであるが、私が現在所有している顕微鏡の能力では、図鑑に記載されている「微かな疣状」であるということを確認することは困難である。

今回サビムラサキホコリとして紹介している標本は二つあるのだが、「日本変形菌誌」（山本幸憲　日本変形菌誌製作委員会2021年）の分類基準に基づいて種の同定を行った。柄が中空なのでムラサキホコリ科、子嚢の表面にほぼ完全で平面的な表面網があるのでムラサキホコリ属。

樹上生で胞子は疣型であるので、日本変形菌誌のムラサキホコリ属検索表Cの該当となる。胞子は遊離し、子実体は束生しており、表面網の網目はほぼ30µm以下。子嚢体は高さ1㎝程度で胞子の直径は5µm程度なので、該当するのはサビムラサキホコリのみとなった。

さらに詳しく観察してみると、細毛体は軸柱の全体から出ており、内網に拡大部があること、表面網は角張っており、ほぼ均一な太さで刺はほとんどないなど、日本変形菌誌の記載と矛盾はない。

和名の由来と考えられる子嚢の色が錆色から赤褐色であることも、他の類似種と並べてみるとよくその違いが分かる。鉄錆を連想させる色合いである。

実はこの標本の種同定については、専門家による確認は得ていない。
私の独力による同定結果のみである。

もちろん間違ってはいないと自分では思っている。とは言うものの、間違っている可能性はゼロであるとは言えないだろう。

しかし、「サビムラサキホコリ」という和名の由来であろう「錆色」を呈していることが、この同定結果が正しいことを十分に担保してくれていると思う。