メダマホコリ。印象的な名前であるが、現物はそれ以上に印象的である。図鑑の中でもとても存在感のあるメダマホコリ、変形菌に興味のある人であれば一度は出会ってみたい種であろう。
子嚢は湿っているときは眼球に似ている。目玉そっくりの外見はインパクトがあり、初めて見ると驚いてしまう。しかし直径は0.3~1mm程度と非常に小さいので現物を見つけることは中々むつかしい。
秋から初冬、十分に湿った山中、針葉樹の倒腐木、それも程よく苔むしたものを探すと見つかることがある。とても小さいので、しゃがみこんで顔を近づけてライトで照らしてかなり集中して探してもなかなか見つからない。
私などは、ほかの人に「ここにいるよ」と教えてもらって、かろうじて分かるというぐらい見つけるのは難しい。
子嚢壁は2層になっていて、外壁は湿っているときは厚いゼラチン質でこれにより何ともメダマっぽく見える。成熟とともにゼラチン質の外壁から子嚢が抜け出てくるようで、乾燥が進むと銀灰色から青銅色で金属光沢も出てくることがある。この辺りはルリホコリ科らしい。
メダマホコリの但馬での存在は、2020年11月に枡岡望氏により朝来市の高標高地で初めて確認され、2021年11月には但馬粘菌クラブの扇山コズッコ小屋周辺観察会において、さらに2022年12月には同じく観察会において西垣由佳子氏が豊岡市但東町の標高160m程度の低標高地域で確認し、但馬地域においても広く生息していることが分かってきた。
秋から冬にかけてコケに覆われた針葉樹の腐木に発生する。
珍しいように思われがちだが意外と生息しているようで、ネットでの報告でも各地からの報告が見られる。日本変形菌誌(山本幸憲、2021年、日本変形菌誌作成委員会)には「やや普通」と記載されている。