夏から秋にかけて針葉樹・広葉樹の林内地上に発生する。
時に菌輪を作る。形はサンゴ状で若いうちは全体に橙色をしていて美しく、古くなると退色して褐色になる。枝わかれは、ほぼ根もとにまで達するが、よく似た赤系統のホウキタケ類は複数種存在し、日本各地でハナホウキタケの名で呼ばれている。
今のところ多くの図鑑では、これらをハナホウキタケとして1種にまとめて掲載している。厳密には色や形状が異なるものが多く存在しており、今後分類研究が進むようなことがあれば、多くの種類に分類されることになると思われる。そんなわけで、ハナホウキタケ類の正確な同定は現状では不可能であるため、今回はハナホウキタケの仲間らしきものをハナホウキタケの仲間として報告したい。
山渓カラー名鑑「日本のきのこ」では、ハナホウキタケは軽い毒性があるとして、毒きのことされている。吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などの症状があらわれる場合があるが、毒成分については詳しい事はわかっていない。また、キノコの厳密な種別により、あるいは食べる人の性質により、症状を見せない場合もある。キノコの先端に有害物質があり、先端部分を除去することで食用になるという未検証な話もある。
一方で、完全な食用きのことして知名度の高い「ホウキタケ」(Ramaria botrytis)は、根本の部分ががっしりとして白く、先端部分のみ朱色をしている。別名ネズミタケと呼ばれ優秀な食菌である。
家の光協会(昭和43年出版)の「原色 きのこ全科 見分け方と食べ方 清水大典」によると、「ホウキタケはさわやかな歯切れ、コクのある舌ざわりで昔から食茸の中でも上位に置かれる。」と記載されている。一方、ハナホウキタケについては、「生を使う料理では脂肪質と合い、一度塩漬けしたものは広い料理に用いられる。」と記載されている。
「しかし、このハナホウキタケと同形同色のもので、おうおう軽い下痢を起こすことがあるため一般的な食菌として勧めることはできない」と記載されている。「習慣的に食べている人たちや、その地方ではきわめて普通の食茸としてなんの不安も感じていないが、上述のような例もあるため十分注意したい。」という旨が記載されている。実際のところ、地域によっては直売所などで、ホウキタケと並んでハナホウキタケも販売されているところもあるようだ。参考となる面白い記事があったので興味のある方は見てほしい。
http://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/ringyose/seikkinoko/koza/kinoko14.html
私もこれまで、ハナホウキタケの仲間と何度か出会っているし、もしかしたらホウキタケではないかと思われるものとも出会っている。しかし、どうもはっきりせず、食べたことがない。
ハナホウキタケの仲間であったとしても、無毒である場合もあるし、有毒であったとしても大した中毒にはならないことも分かっているのであるが、わざわざ危険を冒すこともない。しかし、いつか、確実に「ホウキタケだ!」と断言できるものと出会い、味わってみたい。