イワナの仲間は川の源流部に棲んでいます。日本の淡水魚の中で、最も山奥に棲んでいる魚です。山奥のさらに奥、標高も高くて水の冷たいところに棲んでいます。それも、真夏でも水温が15℃を超えない冷たい渓流です。但馬の山奥にもイワナが棲んでいる渓流があります。
日本では北海道から本州にかけて分布しています。分類については諸説あります。日本在来のイワナ類は、大きく2種に分けられ、さらに6亜種に分けられる説があります。しかし確定的ではないため、今後変更されるかもしれません。西日本のイワナ類は、ニッコウイワナ、ヤマトイワナ、ゴギの3亜種とされています。このうち、但馬地方に生息しているのは、ニッコウイワナです。白い斑点模様がはっきりとしていることが特徴です。肉食性で、水生昆虫や水面に落ちた虫、小魚などを食べます。
イワナを探すには、ゆっくりと動いて、岩の陰を注意深く覗き込みます。こちらが動くと、岩の間や陰に素早く逃げ込みます。まさに「岩魚」です。
この写真を撮影した川は、標高の高い源流部の細い渓流です。撮影時、ウェットスーツを着ていても、冷たくて体が震えました。
すぐ手元の岩陰に1匹潜んでいました。30センチ近くはありそうな大きな個体です。カメラを向けるため、そっと手を動かすものの、すぐに逃げ出していきました。とっさに撮ったので、ピントが合っていません。
後を追って、今度は私が岩陰に隠れながら、少しずつ近づきました。
大きいもので全長60センチにもなるようです。
小さな若魚もいました。
西日本のイワナ類は、世界のイワナ類の中では南限の種です。冷水域から出ることができないので、海へ下ったり、遠く離れた他の山の渓流へ移動することもできません。川の中流域まで来ると、水温が高くて死んでしまいます。西日本のイワナ類は、寒い氷河期の頃は海と行き来していたが、氷河期が過ぎて海や川の水温が上がり、山奥の渓流に閉じ込められたと考えられています。西日本のイワナ類は、氷河期以降、それぞれの渓流で、約1万年も昔から遺伝子を受け継いできました。まさに氷河期の生き残りです。
写真・文 コウノトリ市民研究所 北垣 和也