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春が来るのを待つ村「春来」を散策

みなさんこんにちは。
但馬ふるさとづくり大学の現地講座で、新温泉町の春来地区を訪れ、お話を聞いてきましたので、その様子をお届けします。

春来とは

春来集落は新温泉町の山間集落で、香美町との町境となる春来峠(標高400m)にあります。豪雪地帯で冬季には1~2mの積雪があります。
この集落は、もともと椿村と言われていましたが、「椿」という字の「木」と「春」から「春木」と呼ばれるようになり、その後「春が来るのを待つ」ということで「春来」になったと言われています。

春来の歴史

春来峠は交通の難所でしたが、昭和50年に国道9号の「春来トンネル」が開通しました。
ただ、それにより旧国道沿いの春来集落は取り残される形となり、多くの住民が春来を離れていきました。
それを危惧して昭和57年に村づくり部会を発足させ、集落の組織体制の整備や、集落内道路の改修に取り組みました。
平成11年には春来そば生産組合を設立、「そば処春来てっぺん」をオープンし、そばの生産から加工、販売まで行う6次産業としてスタートしました。令和元年には、道の駅「山陰海岸ジオパーク浜坂の郷」にも出店し、年間2万人の入り込み客があり、オープン以来黒字経営を続けられています。

将来を見据えた改革

順風満帆に見える「てっぺん」の運営ですが、地元は危機感を抱いていました。
この「てっぺん」は地元の任意団体として運営しており、従業員も集落の方がパートとして働いていました。ただ、集落の高齢化に伴い、このままでは将来従業員が確保できず、店を維持することができないことが想定されました。
そこで、平成29年から県の地域再生大作戦の支援を受けながら、住民が協議を重ね、令和3年4月「てっぺん」は株式会社となりました。

地元運営の「そば屋さん」なのに株式会社?

集落外からも従業員を確保し、正社員として採用し社会保険・雇用保険にも加入すること等から株式会社を目指しました。
株式会社化にあたっては、まず春来区を法人化(認可地縁団体)し、これまでの「そば生産組合」の資金を区に移転し、その資金をもとに春来区が100%出資する「株式会社春来てっぺん」を設立しました。
地元100%出資なので、経営方針・人事権などは春来区の意思によるものとなります。

また、「てっぺん」の経営だけではなく、春来区の様々な課題(営農組合の運営や独居高齢者対策など)も、将来的にこの株式会社で担っていこうという構想もあるようです。
他の地域ではあまり例を見ない、いち早く危機を察知し先進的な取り組みをされている一つのモデルとして、今後の動向に注目していきたいです。

難しい話はさておき「おそば」を食べましょう

そば定食をいただきました。地元でとれたソバ粉を使用した10割そばですが、とてもコシがあります!
「つなぎ」が入っていないのか聞いてみたところ、ある工夫により「つなぎ」を使わずコシと弾力を出していると言うことです。企業秘密(?)になるかもしれないので、気になる方はお店で聞いてみてください。
また、抹茶塩でいただく、地元で採れた山菜の天ぷらも美味でした。

「あげもち」や「そばかりんとう」も販売されています。お土産にいかがですか。

春来を散策

地元の方の案内で周辺を散策しました。
春来は峠の頂上の集落で、周りを遮るものがなく、とても見晴らしがよく開放感があります。
写真はそば畑の様子です。間もなく収穫されるそうです。

春来小学校跡へ

「てっぺん」から徒歩10分のところに、春来小学校跡があります。
春来小学校は平成22年に統合により廃校となり、その建物は春来地区の公民館として使用されています。

そして、出口龍憲氏の龍の墨絵が展示してありました。

出口龍憲画伯は龍野市の生まれで、生涯にわたり龍の墨絵を書き続け、様々な賞を受賞されるなど世界的に評価され、平成25年に死去されました。龍の絵はここに40点保管されています。
では、なぜここ春来に龍の絵が・・・?ということですが、出口画伯が「子供神輿」の譲り先を探していたところ、春来区が真っ先に手を挙げて、それ以降、出口画伯と春来区の親交が続き、龍の絵の寄贈の受けたということです。

迫力があり、かつ繊細な龍の墨絵が約20点展示されていました。
入館無料で、日曜祝日のみ開館しています。

小学校の教室がそのまま残されているところもあります。
「てっぺん」で販売されているかき餅は、ここで薄く切り、乾燥させているそうです。

地元の方のパッチワークも展示してあります。また、住民が集まって工芸を行うなど、この公民館は地元の人の憩いの場、発信する場にもなっています。

クラウドファンディングで獣害対策

車で少し椿山公園方面へ走ると、日本海が見えるスポットがあります。ススキとそば畑と遠くに見える日本海がいい感じです。
写真ではわかりにくいのですが、畑と山のきわに獣害対策の電気柵が設置されていました。ここ春来は山深いため鹿・猪が多く、冬には積雪で柵が倒れてしまうので獣害対策に苦労されています。
そこで、クラウドファンディングを利用して、電気柵の資金を調達することにしました。支援いただいた方へのリターンとして、春来のお米を贈ったり、春来でのそば栽培・獣害対策体験を用意し、クラウドファンディングによる「関係人口」の拡大も視野に入れられています。そして見事に目標金額を達成されました。

椿山公園

奥に進むと「椿山公園」があります。紅葉が始まっていました。
ここからさらに奥に行くと、柤大池公園があります。

散策を終えて

今回お話をお聞きして、この春来区は、春来トンネル開通による過疎化への危機感、そば処「てっぺん」の将来的な運営への危機感をいち早く察知し、他の地域に先駆けた、先手先手の取組をされていると感じました。
地元100%出資の株式会社の設立という、村の大きな決断と転換による地域の活性化、逆境をはねのける強い力を学ばせてもらいました。
春が来るのを待つ村「春来」に、すばらしい春がやって来ることを願っています。

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