但馬のミスミソウ(雪割草)その後
2013年にミスミソウの記事を書きました。
それ以降に複数の自生地が見つかり、但馬各地に小さな個体群があることが分かりました。
一方でシカによる食害や盗掘によって激減している場所もあります。
現在、最大の敵はやはりシカです。
幸いなことにミスミソウは地面に張り付くように生育しています。
シカは地面に張り付くような背丈の低い植物を食べるのが苦手です。そのため背丈の低い植物は生き残る確率が高くなります。屋久島の植物や春日山の植物たちが目立って小さいのは、シカの食害への対策として小型になっても暮らしていけるように進化した結果だという説もあります。
写真は2018年の養父市内です。昔は緑で覆われていた斜面がむき出しの地面になっています。残っているのは、緑丸内のアセビ;毒があってシカが食べ残すもの、赤丸内のミスミソウ、青丸内のサンインタチツボスミレです。どちらも地面張り付くタイプです。
実はこの斜面にはあと2株のミスミソウが残っていました。アセビの中とその横にある倒木の際です。共にシカの口が届かない場所でした。
この地には点々と自生地があり、開花株も残っていました。
いくら食べられにくくて生き残っていても周りの環境が激変すればやがて消えてしまいます。
撮影時から7年たっています。見るのがつらくて近づいていませんが、訪れてみましょうか?
ここは大丈夫な場所です。崖地の小さな岩棚のようなところに生えています。
大変厳しい場所なので人もまず近づきません。
同じくらい脅威なのは盗掘です。
シカから守りたくて柵で囲うとそこに貴重なものがあると教えることになります。かわいらしい花が咲いていると盗りたくなります。この場所は、人通りの多い場所です。網を張ればあっというまになくなると思います。
痛めつけられて息絶え絶えの群落の場合だと柵の中はみすぼらしくて今にも枯れそうに見えます。「私が持って帰って植えた方が生き残るに違いない、置いておいてもどうせ枯れるのだから」と思われかねません。(開発を思いとどめようとして公開したことで盗掘にあった事例があります)
2024年、シカにかじられて弱っているが、人通りが非常にまれで柵で囲っても見つけられることのなさそうな群落を見つけました。
人通りは少なくても目立ってはいけません。網の色にこだわりました。緑の網はよく目立ちますが、黒だと少し離れると分からなくなります。
周りの草を刈って、生育の手助けもして回復させたいと思います。
さて、但馬のミスミソウは白です。なんな中で、これまで最も色がついていたのはこれです。ピンクといってよいと思います。
最後に紹介するのは能登半島の雪割草(オオミスミソウ)です。
2024年3月末に、久しぶりに能登半島に行って堪能しようと計画していました。そこに能登半島地震が起きました。
輪島市門前町では毎年「雪割草まつり」が行われていました。2024年は室内でしたが、2025年は野外で行われることになりました。ただ、まだ群生地である猿山までのバスの送迎は復活していません。復興支援のためにも訪れていただけるとありがたいです。
能登半島のものは但馬のものとは若干違ってオオミスミソウになります。
そこでは人が最大の敵だと聞いています。昔はもっと色鮮やかなもの多かったとか濃い紫がなくなったとか聞きます。心ない人が盗むのだと言われていました。