ヘイケイヌワラビ イワデンダ科
ヘイケイヌワラビは、鳥取県・広島県・島根県・山口県・兵庫県に生育し、それぞれの県でも数か所にしか生育していません。兵庫県では1か所にわずかに生育するのみです。非常に希少であるので国や各県のRDB種に指定されています。
兵庫県で発見されたのは偶然です。発見された方が目的地に向かう際に道を間違えられて別の谷に入られたのがきっかけだったと聞いたことがあります。以後、関係者で見守ってきています。
ヘイケイヌワラビは、希少なうえに赤紫の葉柄にすっと伸びた葉身がつくなどなかなか美しい姿をしています。マニア好みの植物といってもいいかもしれません。そのために盗掘が心配されました。そこで、兵庫県立人と自然の博物館で胞子からたくさんの個体が育てられて、必要な方には差し上げますと先手を取って配られました。地元だからということで私たちのところにも一鉢やってきましたが、残念ながら数年で枯らしてしまいました。猫に小判でした。写真の鉢は、ずっと見守ってこられた大先輩のお宅にあるものです。さすがに立派に育っています。
ヘイケイヌワラビの葉は、ほぼ1回羽状深裂で切れ込みは浅く、近縁のタニイヌワラビは2回羽状複葉になります。両者には雑種があって、アキイヌワラビと呼ばれますが、確かに足して2で割ったような姿かたちをしています。
ヘイケイヌワラビのヘイケはもちろん平家です。最初に見つかった島根県の自生地が平家の落人伝説のあるところであり、その伝説にちなんで命名させたそうです。
兵庫県のヘイケイヌワラビは発見当時50ほどの個体が確認されています。シカの食害で年々数を減らし、昨年の夏は1株しか確認できませんでした。栽培株があるとはいえ気がかりな状態にあります。