シロウマアサツキ ヒガンバナ科ネギ属
これはシロウマアサツキです。
アサツキはお店屋さんにも売っています。優秀なネギです。但馬にはたくさん自生しているとずっと信じていました。そして、いろんな人にアサツキですと言ってきました。
ところが、アサツキではなくシロウマアサツキでした。思いこみのなせるわざです。図鑑の記述を読んで花を見るとアサツキでないことは一目瞭然です。あまりに普通にあるので読んでませんでした。深く反省です。
アサツキに違いないと思いこんでいました。だってシロウマアサツキという名前ですよ。きっと白馬岳周辺に多いのでしょう。白馬といえば、北アルプスの白馬岳(2932m)です。どう考えても北方系の植物か高山植物だと思います。この植物は、但馬では、海岸線近くに特に多いです。海岸は温かいところです。海岸に多い植物を高山植物とはなかなか思いませんよね。
ここは砂浜の終端部。少し数が減った。竹野。
しかも、北方系だと思っていたシロウマアサツキですが、白馬岳のある長野県では絶滅危惧種になっています。本家本元の長野県で稀少なら但馬にたくさんあるわけないと思うのが普通です。ちなみに、東日本では、 青森県、秋田県、福島県、群馬県、新潟県、長野県で絶滅危惧種に指定されています。北方系と思われている植物が北日本で絶滅に瀕しています。特別に稀少な植物に違いないと思いませんか。こんなものが西日本に普通にあるなんて思いませんよね。
「まさかシロウマアサツキが但馬にあるなんて」と思ったのは私だけではありません。植物を専門に研究されている方々が書かれた本にもアサツキと書かれていました。例えば、昔の図鑑には、「本州(中部地方以北)・北海道」などど書かれていました。今の図鑑には、「北海道、本州(北から山口県まで)、サハリン(樺太)、北朝鮮、アジア東北部、東シベリア。」などど書かれています。よく言えば、生き物の世界は奥が深いというのか、まだまだ楽しみがたくさん残っているというのか、・・・ですね。
2008年に「京都府北部に点在することが明らかとなりました」という報告が出ました。(日本植物分類学会誌『分類』 Vol. 8 – No.2 津軽俊介「日本植物分類学会賞受賞記念論文 標本に学ぶ」)「きっと丹後だな、但馬にもあるに違いない。但馬も調べなきゃ」とは思いましたが、点在するという言葉に捉えられて、但馬にあっても稀に違いないと思い、後回しになりました。この時に写真を見るくらいすればよかったと思います。一目で分かるんですから。
2003年に撮った写真。この写真だけでシロウマアサツキだと分かる。一手間惜しんだのが大失敗。
京都府レッドデータブック2015に「高山の草地を中心に分布しているものだが、近年府北部に広範囲で生育することが確認された。」「強健なものであり個体数も少なくない」とありました。「但馬にもたくさんあるに違いない。今度こそ調べなきゃ」と思いました。そんな時に、コウノトリ市民研究所の「コウノトリ野鳥観察会6月」がアナウンスされました。観察会はアサツキの群生地がある場所です。早速、申し込みました。
観察会の場所には、かつて一面にアサツキが広がっていました。草刈りの頻度が低くなって年々まばらになってきていますが、毎年のように自然学校で子どもたちに「アサツキです。野生のネギです。おいしいです」と説明してきました。
かつてはアサツキだけが広がっていた。今は、こんな状態だ。奈佐。
一目でシロウマアサツキと分かりました。区別は実に簡単です。
アサツキとは花の構造が異なります。花弁に対するおしべの長さが違います。
アサツキ 雄しべの長さが花被片の1/2~2/3
シロウマアサツキ 雄しべの長さが花被片と同長
明らかに雄しべが突き出しているので、これはシロウマアサツキ。神鍋。
花からおしべが突き出して見えていれば、シロウマアサツキです。
もう一つ大きな違いがあります。シロウマアサツキは種子をつけますが、アサツキは種子をつけません。
花の時期と種子の時期以外は識別は困難です。このこともシロウマアサツキがアサツキと思われていた原因の一つだと思います。
どうやら但馬のアサツキは、シロウマアサツキのようです。アサツキを見つけることの方が目標になりそうです。