たじまのしぜん

ヤマジノギク

ヤマジノギクは,日当たりのよい草原に生えます。この仲間の中では一番大きな花を咲かせます。海岸にはよく似たハマベノギクが生育しますが、ヤマジノギクの茎は立ち上がり、ハマベノギクは立ち上がらずに地をはいます。
 よく枝分かれし、茎には毛がたくさん生えています。

花は大きく、裏返すと総苞片が細長く先が尖っています。

花を分解すると、ヨメナやノコンギクと大きく異なることが分かります。
 花をばらばらにした一つ一つが実は一個の花に当たります。周りにある花びらのようなものを舌状花と呼び、中央にある花びらのない黄色い筒のようなものを筒状花と呼びます。
 ヨメナの仲間は、舌状花にも筒状花にも非常に短い冠毛しかありません。ノコンギクには、舌状花にも筒状花にも長い冠毛があります。ヤマジノギクは、舌状花には非常に短い冠毛しかなく、筒状花にも長い冠毛があります。昔はこの特徴をもとにして別の仲間に分けられていたほどの大きな違いです。

花の終わった後、冠毛が目立って、これだけでヤマジノギクだと分かる。
 ヤマジノギクにはアレノノギクという別名があります。山の荒れ野に生えているといういうことを示す名前だと思います。ただし荒れ野は、人の適度な影響を受けた自然度の高い草原を指しています。人の手が過度に加わる草原はいたるところにありますが、そんなところは外来の植物が繁茂しています。山にあった草原は、人の影響(草刈りということです)が少なくなり、林に姿を変えてきています。生育に適した草原が激減し、山間の崩壊地や乾いた岩山の草地など自然の力で維持されている草原に分布が限られるようになってきています。
 他の野菊たちが多年草であるのに比べて、ヤマジノギクは2年草です。これは他の野菊は、ある年に花をみつければ翌年もそこに行けば見られる確率が高いが、ヤマジノギクはそうでもないということを意味します。

ヤマジノギクは、この手の野菊の仲間では大きな花を咲かせます。そのために園芸化をされてもいます。
 「ヤマジノギク」は、野生の花をもとに大分県農林水産研究指導センターの花き研究所で、50年前から選抜を繰り返して育成した、大分県オリジナルの花なのだそうです。紫、白、ピンクがあり、杵築市、国東市、津久見市などを中心として大分県内各地で作られており、10月中旬から12月にかけて東京、大阪を中心に出荷されているのだそうです。
 元々はみかん一辺倒の栽培から他作物への転換として始まったのだそうですが、露地栽培が可能なため収益性が高く、栽培農家は年々増加しているのだそうです。
 但馬にもこんな可能性を秘めた花があるんでしょうね、きっと。

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