ワカサハマギクは、主に福井県から鳥取県にかけての海岸沿いに生育します。主にと書いたのは、染色体の研究が進んで伊吹山系や鈴鹿山系に生育するよく似たキクがワカサハマギクだと分かったからです。
日本海側では、海岸にごく近い岩場に生育します。「兵庫県維管束植物8」には、海岸から15kmばかり内陸に入った場所での標本例が1例載っていますが、自生なのか疑問が残ります。幸い私の家の近くなので来年あたり詳しく調べてみたいと思います。
ワカサハマギクは、1934年に敦賀市で発見されたものに名前がつけられたそうです。敦賀市のある若狭にちなんだ名前なのでしょう。ワカサハマギクは、福井県や鳥取県ではそれほど多くなく絶滅が心配される植物になっています。兵庫県には多くて、絶滅が心配されるような状況ではありません。但馬海岸には多く、豊岡市から新温泉町にかけて海岸道路を走るといたるところに群落が見られます。岩場だけでなく吹き付けられたコンクリートの割れ目にもしばしば見られます。但馬はこのキクの生育に好適な場所なのでしょう。
ワカサハマギクは、リュウノウギクの変種だとされています。リュウノウギクは染色体数が2n=18で、ワカサハマギクは染色体数が2n=36で、染色体数が2倍になっています。ワカサハマギクは4倍体といわれるものにあたり、2倍体であるリュウノウギクよりも大きくなります。
例えば、頭花の直径は
リュウノウギク 3.5~4cm
ワカサハマギク 4 ~5cm
となります。ワカサハマギクは、全体がリュウノウギクよりも大きく、花がたくさんつきます。
ワカサハマギクなどの野菊には、遺伝子汚染という危機が迫っていると言われています。
人が栽培している菊(イエギクといいます)の花粉を受けて雑種ができてしまい、純粋な野菊ではなくなってしまうというのです。
ところで、先にあげた「兵庫県維管束植物8」には、リュウノウギクの但馬の産地が載っていません。リュウノウギクが但馬に生育しないわけではありません。誰もまだ標本にして博物館などに収めていないのです。