春にギフチョウを探して里山を歩いていると、山頂や尾根の開けた場所で占有行動をとるヒオドシチョウに出会います。ヒオドシチョウは成虫で越冬し春になるといち早く繁殖活動にはいります。食草のエノキに産み付けられた卵は、やがて孵化し6月には蛹を経て新成虫になります。やがて夏になると物陰で夏眠しているのが観察されていますが、そのまま3月まで姿を見る機会はほとんどありません。
一方、同じ時期に現れるギフチョウは蛹になった後、そのまま夏を過ごし、翌年の春に新成虫になります。
ヒオドシチョウはオレンジ色に黒い斑点、白や青の模様も少し入ります。形がよく似たキタテハより一回り大きく、色も鮮やかです。名前の「ヒオドシ」は戦国時代の武将の緋縅から来ているそうです。
翅の裏面は地味な色。樹皮の色に似ています。ヒオドシチョウは花で吸蜜することは少なく、樹液や果物、動物の糞などに来ていることが多いようです。
春も終わりに近づくと翅がボロボロに破損した個体に出会います。それだけ活発に活動してきた証です。
幼虫の食草はエノキなので、分布は広いのですが、どのエノキにもいるわけではありません。コウノトリ文化館にあるエノキの周辺では、10年前には側の木柵でたくさんの個体が羽化していましたが、いつの間にか姿を消してしまいました。