オオヨシキリは、私たちのごく身近で観察できる野鳥のひとつではないでしょうか。姿は見えずとも、河川敷のヨシ原から「ギョギョシ・ギョギョシ」と、うるさいほど大きく鳴いている鳥に気づく人は多いでしょう。春になると繁殖のために南から渡ってくる夏鳥です。多くの夏鳥が山の中で繁殖するのに対し、オオヨシキリは平地の河川敷で繁殖します。
全身が灰褐色の濃淡の姿は、大きな鳴き声に対し地味です。オオヨシキリのオスはヨシやオギの穂先まで上がって、縄張りを宣言するため大声で鳴き続けます。鳴いているときのオオヨシキリの口の中は赤く、地味な鳥のワンポイントカラーがとてもよく目立ちます。
オオヨシキリは一夫多妻の繁殖を行います。抱卵はメス任せ。給餌にはオスも参加するようです。繁殖期間が長く、7月に入っても鳴き声が聞こえます。また、カッコウの托卵相手としてオオヨシキリは知られています。自分よりはるかに大きなカッコウのヒナを育てるオオヨシキリの映像を見ることがありますが、実際にこの目でカッコウのヒナを育てる様子を観察したことはありません。晩夏から初秋の河川敷で、カッコウの幼鳥を見かけたことがあります。きっと、オオヨシキリの仮親に育ててもらって巣立ったカッコウの仔なのでしょう。
オオヨシキリは兵庫県レッドリストで、かつてはBランクの野鳥でした。但馬ではかねてより普通に見られる鳥でしたので、首をかしげていましたが、2013年の見直しで要注目種となりました。瀬戸内から日本海に列島を縦断する兵庫県、自然環境も県南と県北では随分違います。豊かな河川環境を有する但馬、オオヨシキリもこちらでは棲みやすいのでしょう。