2022年の年明け、竹野新港でシノリガモ2羽を観察しました。外海は大荒れが続いていますが、防波堤にブロックされた港湾は穏やかな水面。そこに一時退避してきた本種と出会ったというわけです。2羽とも、昨年生まれの若いオスのようでした。
成鳥オスはカモ界きっての美形。深い紺色と臙脂(えんじ)色のベースカラー。その上に白いペンキで書きなぐったようなサイケデリックな模様。この白い模様が「しのり」と読めるだの、「シノリ」と読めるだの、名前の由来についていろいろと言われています。
漢字で「晨鴨」と書き、「晨」(シン)が夜明けを意味するとのこと。夜明け前の朝ぼらけの東の空を、命名者はイメージしたのでしょう。実際、シノリガモ成鳥オスを見つけたときには、その美しさにほれぼれとします。
これはシノリガモのメスです。他のカモ同様、メスの羽根模様はオスに比べ、ずっと地味です。
カモの正面顔はおどけた表情ですが、中でも、このシノリガモはまるで道化師のように見えます。シノリガモの英名はHarlequin duck。道化師の名前をもらった理由もわかります。
シノリガモは但馬では冬鳥として、日本海沿岸で見られます。潜水して貝や甲殻類を捕食しながら越冬します。北の繁殖地では渓流に入って子育てをするそうです。海のカモのイメージしか持たない私達には意外な生態です。