マルナシアミホコリ
変形菌(粘菌)は、変形体と呼ばれる大きなアメーバ状体で動き回って、朽ち木や落ち葉の中で生活しているが、それが胞子を飛ばすときに一夜で子実体という形に大変身する。変形菌は、この子実体を観察の対象とするのが普通なのであるが、巨大アメーバ状の変形体も赤や黄など色とりどりで興味深く、フィールドで出会うことが出来るととても嬉しいものである。中でも青い変形体は色合いが強烈で、初めてみたときは驚いてしまう。山中の自然物とは思えないような色なのだ。
私が初めて出会ったときは、まだ変形菌についての知識が浅く、その青いものが変形体であることさえ理解できなかった。
強烈な色合いが印象に残っていて、青い変形体をもう一度見たいと思い探し続けていたところ、昨年の8月に青い変形体に再会することが出来た。マルナシアミホコリの変形体である。
この写真には、青い変形体、若い子実体、成熟した子実体、複数のステージが同時に見ることが出来る。
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マルナシアミホコリの変形体は一つの大きな集団のように見えるが、すべてが同時に子実体に変身するのではなく、一部一部が時期をずらして子実体に変身しているようである。
青い変形体2片を自宅へ連れて帰り観察することにした。そのうちの一つはその日のうちに変化が見られた。夕方から翌日の昼前にかけての変化を観察したので見ていただきたい。
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肝心の子実体の立ち上がり部分が記録できていないのが残念であるが、彼らの大変身の様子が分かると思う。
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巨大アメーバ状の青い変形体は、扇状・網目状態から粒粒状になり、球状の子嚢を柄が立ち上げていき、青色が薄く白に近づいていき、子嚢に網目が浮き出てきて、全体に褐色が出てくる。
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実際に見ないと分からないことなのだが、立ち上がったばかりの球状の未熟な子嚢が、青から徐々に白くなっていく頃を実態顕微鏡で観察すると、何とも言えず美しい。
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残りの1片は、巨大アメーバとして動き回るものの、その日も次の日も変身せず、やがて乾燥の影響もあってか動きが鈍くなってきたので、我が家の庭へ逃がしてやった。
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おそらく生き延びることは無理だろうがムラサキホコリの仲間も発生していたクルミの枯木に逃がしてやった。
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なお、アミホコリの仲間は種類も多く同定はなかなか難しいので断定は難しいのであるが、今回は変形体からの観察であり、その色からマルナシアミホコリ、ナシアミホコリ、オオアミホコリに絞られ、子実体の形態からマルナシアミホコリと判断した。