荒れ地や河川敷のそばを通るとき、草やぶの中から「チッ・チッ」という高い声で短く鳴く鳥の気配を感じることがあります。このような生息環境を好む鳥の代表はホオジロ科の仲間です。ホオジロは一年中このような場所で生活していますが、越冬のために北から渡ってくるホオジロの仲間も何種類かいます。
今回紹介するアオジも、冬の間に見られるホオジロ科の鳥です。草やぶの中からなかなか出てこない鳥ですが、しばらく観察を続けるとひょっこり地上の目立つ茎や枝に出てくることがあります。
緑黄色のお腹がよく目立つアオジですが、冬の間は少し地味目な羽根色になっています。この写真はアオジのメスですが、オスに比べて全体的にコントラストが弱く、オスのような目先の黒色もありません。
春になると北の繁殖地に帰って行きます。その頃には、コントラストがより強い夏羽に換羽し、美しい姿に変身しています。写真は春の渡り時の夏羽のアオジです。
アオジは兵庫県レッドデータのAランクに指定されています。冬の平地で普通に見られる野鳥が、どうしてAランクの希少種なのでしょう。どうやら、繁殖個体群として兵庫県が南西限になっていることがその理由のようです。春になればアオジはみんな北に上がってしまうと思っているのが、ひょっとしたら、但馬の山地でひっそり繁殖しているのかもしれません。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信