秋の渡り時期に、稀に豊岡盆地に迷い込んで観察される小型のアカガシラサギ。中国大陸の南北を行き来する渡り鳥なので、日本での観察例は多くないです。最近は日本での繁殖例も報告されており、今後は観察頻度が増えてくるかもしれません。
秋のアカガシラサギは非繁殖羽に換わっていて、名前の由来である「赤頭」目撃するチャンスがこれまでありませんでした。
この春、ようやくその「赤頭」を見ることができました。繁殖羽の、美しいアカガシラサギです。コサギより小さく、写真で見るイメージ以上に小さなサギでした。
田植え前の湛水田に入ったのを、偶然通りかかった鳥仲間が見つけて教えてくれました。突然水が入って、土の中でのんびりしていたカエル、ミミズ、ケラなどの生きものを次々に捕まえてゆきます。
縮めていた首を伸ばすと、突然大きな鳥になったようです。首の回りに赤い羽があり、後頭部には同じ色の冠羽があります。繁殖期の鳥の多くがこのよう美しい飾り羽根を持ち、美しい声で囀ります。
アカガシラサギは警戒心のあまり強くない鳥で、撮影のために身を晒していても遠くに飛び去ることはありませんでした。数日間、同じエリアに留まり、その間に始まった代掻きのトラクターに付いて回って、効率的に餌を採っていました。この行動は、他のサギでも同じように見られます。
翼を広げると、この鳥がサギの仲間であることがよく理解されます。頭と背中の羽根以外は真っ白です。アカガシラサギは飛翔姿も、とても優雅で美しい鳥でした。
但馬でもなかなか目撃することのなかった、繁殖羽のアカガシラサギ。豊岡の田んぼでたっぷり栄養をつけて、次の中継地へと飛び去って行きました。
写真・文 コウノトリ市民研究所 高橋 信