たじまのしぜん

HOME たじまのしぜん ダテコムラサキホコリ

ダテコムラサキホコリ

ムラサキホコリ目 スミホコリ科 コムラサキホコリ属                         Stemonitopsis typhina (F.H.Wigg.) Nann.-Bremek.

変形菌(粘菌)は現在、世界で約1000種ほどが記載されている生物群である。中でもムラサキホコリ目の仲間は、大型のものや魅力的な容姿を持つ種が多く、この世界における一大勢力を誇っている。

ムラサキホコリ目を構成するムラサキホコリ属、コムラサキホコリ属、カミノケホコリ属、ミダレホコリ属などは、子嚢(胞子を収納している部分)がフランクフルトやガマの穂を連想させる形状をしているものが多い。これらの仲間は外見が互いによく似ており、顕微鏡を用いても種を特定することが難しい、極めて紛らわしいグループでもある。

今回取り上げるダテコムラサキホコリは、「ガマの穂を連想させる形状」という意味においてはムラサキホコリの仲間を代表する種といえるかもしれない。学名が興味深いのだ。

ダテコムラサキホコリの学名は Stemonitopsis typhina。種小名の「typhina」は、ラテン語で「ガマ(蒲)に似た」「ガマに関連した」という意味を持つ。もっとも、ムラサキホコリ類の多くがガマの穂状の形をしているため、本種だけにこの名が冠されていることには、いささか違和感も覚える。

学名を基準に和名を考えれば「ガマノホコムラサキホコリ」などとなるが、それでは本種の最大の特徴である、子嚢や柄を覆う銀〜灰色の被膜が表現できない。やはり「ダテ(伊達)」という名こそが、この粋な姿にはふさわしい。

「伊達(だて)」とは 人目を引く華やかさや、粋でおしゃれな様子、あるいは実力を誇示する振る舞いを指す。「伊達政宗」の派手好きに由来すると言われるように、「目立つ」「派手」「かっこいい」というニュアンスで使われる言葉である。

ダテコムラサキホコリが分類される「コムラサキホコリ属」は、乱暴な説明かもしれないが、細網体の内網に拡大部分があり、子嚢に不完全な表面網を持つグループである。同定の難しいムラサキホコリ類において、本種は「銀〜灰色の被膜」という明確な特徴を持つため、判別は比較的容易だと思う。

ダテコムラサキホコリ、子実体は単子嚢体型、群生し、有柄で高さ2~5㎜。子嚢は円筒形~長卵形。子嚢壁は銀色~灰色で亜残存性、金属光沢があってしばしば砕片状に残る。柄にも銀~灰色の被膜があり軸柱は柄の延長で子嚢の先端近くまで達する。細網体の連絡部は普通拡大し、子嚢の周辺に向かって細くなる。亜表面網は不完全で特に上部で欠ける。胞子は細かい疣型で、大きな疣の集合部が数個みられる。直径6~8μⅿ。春から秋に腐木上にふつう。

ダテコムラサキホコリは銀色~灰色の被膜が特徴的であるので、ほとんどの場合、ルーペや実体顕微鏡により同定できると思う。

私の手持ちの4つの標本について、念のため生物顕微鏡でも確認してみたところ、コムラサキホコリ属の特徴である内網の拡大部や不完全な表面網を観察することができ、胞子のサイズや疣の集合部も図鑑の記載と一致している。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

最後に、2021年5月10日の午前中に変形体から子実体へ変身中のものを採取したので、自宅へ持ち帰り観察した記録写真を掲載しておく。真っ白な子嚢が立ち上がり午後に入り徐々に褐色に色づいてゆき、深夜から翌朝に完成していくのが分かる。写真(上)は5月10日9:40、現地にて。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

14:04、現地にて。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

15:52、自宅へ連れて帰って。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

17:12、自宅にて。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

18:36,自宅にて。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

20:25,自宅にて。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

21:26、自宅にて。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

23:11,自宅にて。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

日付が変わって5月11日04:15、自宅にて。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

08:11,自宅にて。

【追悼】山本幸憲先生を偲んで

この場をお借りして、日本の変形菌研究における大きな悲報をお伝えいたします。

日本変形菌研究会顧問の山本幸憲先生が、2025年12月13日、79歳でご逝去されました。山本先生は高知県を拠点に、北は北海道から南は西表島に至るまで全国各地で調査を続けられ、多数の新種や本邦新産種について、300件を超える論文や著書として遺されました。

1998年に刊行された『図説日本の変形菌』、そして2021年に集大成として上梓された大著『日本変形菌誌』は、我々アマチュアにとってのかけがえのない指針です。精密な図譜と詳細な記載文、そして明解な検索表のおかげで、廉価で入手可能な中古顕微鏡1台からでも、奥深い種同定の世界へ踏み出すことが可能になりました。

但馬情報特急「たじまのしぜん」における変形菌の記事も、常に『日本変形菌誌』を基準とさせていただいております。

また、以前はほとんど命名されていなかった変形菌の和名について、1993年に山本先生が多くの案を提示されました。それが現在、標準和名として定着していると承知しております。それまで専門家が学名(ラテン語)で呼んでいた変形菌が、一般の人々に馴染みやすい和名で呼ばれるようになったことは、まさに画期的なことです。本稿でも度々触れている和名の深みやセンスの良さは、山本先生の変形菌への深い理解と愛情、そして稀代の感性の賜物と言えるでしょう。

山本先生の多大なご功績に深く感謝申し上げるとともに、現在の私たちの活動がその偉大な礎の上にあることを、改めて心に刻みたいと思います。

最後になりましたが、謹んで哀悼の意を表しますとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

RECOMMEND

詳しく見る

但馬全域

投稿日 :
たじまのしぜん

エサキモンキツノカメムシ

詳しく見る

豊岡市

投稿日 :
たじまのしぜん

カワラハハコ 花咲か爺さんの成果

詳しく見る

豊岡市

投稿日 :
たじまのしぜん

コミミズク

  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー

RANKING

POPULAR TAG

  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー
  • サイドバナー