ダイダイアミホコリ
アミホコリの仲間の外見的な特徴は、多くの場合は子嚢壁に肥大または拡大した節の間を連結糸が連絡しており、胞子が飛びきって子嚢内部が空っぽになると、その連結糸と節だけが残存して、子嚢が網の球体のように見える状態になる。
このことがアミホコリという呼び方の由来ではなかろうかと愚考するところである。
アミホコリの種の見分け方はなかなか難しい。
生物顕微鏡による検鏡が必須であると言って良かろう。
変形菌の同定作業は「日本変形菌誌 山本幸憲 日本変形菌誌製作委員会2021年」の検索表を用いて進めるのが最も合理的なやり方であると思われるが、なかなかの経験と技術が必要となってくる。
偉そうに分かったように書いているが、私はまだまだ同定作業がすんなりとできない。
しかし幸いなことに、このダイダイアミホコリについては、初心者でも顕微鏡を用いることにより明確に確認できるのではないかと思うがどうであろうか。
まず実体顕微鏡により外貌を拡大して観察してみると、子嚢は赤色や紫色ではなく、杯状体があり、壁網の節は肥厚している。以上のことが確認できるので、日本変形菌誌の検索表Dということになる。
柄は子嚢の直径の7~10倍程度も長くはないので、この時点でナシアミホコリ、マルナシアミホコリ、ダイダイアミホコリ、フシアミホコリ、アミホコリ、ニセダイダイアミホコリの6種に絞られる。
次に生物顕微鏡で胞子を見てみると、直径5~6μm程度の球形の胞子に鮮黄色の油滴が含まれていることに気づくだろう。
そうであれば検索表を見る限りはダイダイアミホコリで確定ということになる。
あとは日本変形菌誌のダイダイアミホコリのページに移動して、そこに記載されているいろいろな特徴、つまり子嚢の色が黄色~黄土褐色ぽいかとか、杯状体の形状、節の形、連結糸の出具合など、大きな矛盾点がないかなどを確認すればよい。
ダイダイアミホコリについては胞子に鮮黄色の油滴が含まれていることが検索表を見る限り決定的なのである。なお、この含有物は経年して消失する傾向があるということなので、古い標本になると確認が難しくなってくるのかもしれない。新鮮なうちに確認すべき重要な根拠と言って良かろう。
顕微鏡で丸い胞子を拡大して見るわけであるが、鮮黄色の油滴など通常は見えないものが存在するわけで、それを初めて見た時のインパクトは大きかった。
アミホコリの仲間をはじめ変形菌の多くは、外貌で種を見分けることは難しい。生物顕微鏡で拡大して見て、胞子の大きさ、胞子壁の突起模様、細毛体の形状、軸柱・細毛体・子嚢壁との接し方、等々が種の同定の決め手になる場合が多い、というか普通のようである。
ダイダイアミホコリ。単子嚢体型で群生し高さ1~2mm、子嚢は球形で0.4~0.7mm、新鮮な時は黄色で徐々に黄土褐色になる。杯状体はほとんど平滑で弱いひだがあり子嚢の高さの1/2~1/3。「日本変形菌誌 山本幸憲 日本変形菌誌製作委員会2021年」によると、夏から腐木上にやや稀とのこと。