子実体は単子嚢体型で群生し、高さは3㎜程度まで、子嚢は黄色で釣鐘~盃形、直径1㎜まで。裂開後は子嚢壁の外面が花弁状に開く。柄は長く円筒形赤色半透明。おもに夏、広葉樹の腐木上にやや稀。
チョウチンホコリは子嚢のユニークな形と印象的な和名により、図鑑では大きな存在感を占めているが、なかなか出会うことができなかった種の一つであった。そんなチョウチンホコリが突然見つかった。2021年9月5日、豊岡市立コウノトリ文化館多目的ホール前のシラカシの生木2.5mほどの洞に発生しているところを当時の高橋館長が発見した。職場というあまりに身近な思いもかけない、しかも目の前に飼育のコウノトリが歩いているような場所で見つかったのだから驚きである。
発見場所はヒラタケの子実体が発生する場所であり、木材腐朽菌であるヒラタケにチョウチンホコリがとりついたものと考えられる。特徴的で図鑑などで大きな存在感を持ちながらもこれまで但馬地域での生息が確認できていなかったチョウチンホコリ。すぐそこにいた。
このシラカシの幹からは何度かヒラタケの発生が記録されている。一番古い記録は2016年1月のもの。
https://www.facebook.com/kounotoribunkakan/photos/a.560236410664177/1092621937425619
最近では2022年1月にも記録されているが、それ以降はこの洞からの発生は見当たらないようだ。
https://www.facebook.com/photo?fbid=4978528282168279&set=pcb.4978528515501589
多目的ホールと飼育コウノトリが放し飼いにされている観察広場の間にあるシラカシには昆虫などが集まってくるので観察ポイントにもなっている。普通チョウチンホコリは広葉樹腐木に発生するので、生木の高さ2,5mの場所に発生するのは珍しいのではないだろうか。そこは小さな洞になっていて、梅雨時や冬季にヒラタケが発生し、腐木と同様に変形菌類の餌となる菌・バクテリア類がいるのであろう。
特にチョウチンホコリはキノコが好物のようで、ヒラタケの菌糸を餌にして暮らしているのかもしれない。高橋館長はいつもの観察時に黄色い変形体に気付いたそうだ。翌日の観察時では残念ながら変形体は奥に引っ込んでしまったようで見当たらなかったが、高さ3㎜程度までの普通肉眼では気が付かない子実体を標本として採取することができた。チョウチンホコリはユニークな形からファンも多く、少し難しいらしいが変形体の飼育も可能。やや稀な変形菌とされ、これまでに但馬での記録は見当たらず、これ以降も出会うことができていない。