タチフンホコリ。春から秋に松など針葉樹の枯木に発生する。
高さ約1.5㎜、幅約0.5㎜の円柱形の単子嚢体が集まって擬着合子嚢体を形成する。オリーブ褐色で成熟すると頂部が網目状となる。この網目部分が破れて黄土色の胞子が飛散する。これはアミホコリ属の特徴なので、タチフンホコリがフンホコリ属かアミホコリ属かどうかの議論があるようだ。
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ここでは「図説日本の変形菌(1998山本幸憲 東洋書林)」の分類に基づきフンホコリ属としているが、最近はアミホコリ属とする説が多いようである。アミホコリ属とする場合は、学名がCribraria cribrarioidesとなっている。
これを直訳すると「アミホコリ属に似ているアミホコリ属」という意味となるそうで、もともとは「アミホコリ属に似ているフンホコリ属」だったものがアミホコリ属に移行したために矛盾した意味合いになってしまったということらしい。粘菌の分類がまだまだ進んでいないことがなんとなく分かるような気がする。
和名もユニークである。見た目を適切に表現しすぎているというか、的を得すぎているというか、、、見ていただくとわかると思うが、動物の糞を縦に並べたような、、個人的にはわかりやすい和名だと思うが、一部の粘菌ファンからは不評である。学名にせよ、和名にせよ、この生きものにとっては不本意な命名状況だと思う。
柄はほとんど無いか短い。基部の変形膜は橙色で目立つ。やがて地味なくすんだ色になる。
昨年の真夏の山中で大発生に出くわした。
写真ではうまく表現できていないが、1m以上に渡る見事な発生で、擬着合子嚢体の基部の橙色の変形膜が美しく、そこから群立する擬着合子嚢体は林内に威厳を放っていた。清潔感さえ漂わせ、もちろんそのような臭いはない。