アカショウマ ユキノシタ科
ショウマという名前の植物はいくつもありますが但馬で最も目につくのはアカショウマです。
アカショウマはやや明るい林床や林縁に生えます。
アカショウマにはよく似たトリアシショウマという植物があります。両種は変種の関係にあります。
『兵庫県産維管束植物4』にはトリアシショウマは載っていません。出版当時に兵庫県では生育が確認されていなかったのです。
『日本の野生植物』の分布情報を見ると
アカショウマ:本州(東北地方南部~近畿)
トリアシショウマ:南千島・北海道・本州中北部
なるほど兵庫県になくてもおかしくありません。
国立科学博物館の標本・資料統合データベースを見てみました。
アカショウマは、鳥取県、山口県、熊本県でも記録があります。分布図を見ると東北地方南部~近畿に多いものの中国地方や九州地方にもあるようです。
トリアシショウマは、広島県と京都府に記録があります。広島県は庄原市、京都府は宮津市と久美浜町です。図鑑の記述よりも広範囲に生育するようです。
なんとトリアシショウマが久美浜町で見つかっているではありませんか。
この記事のアカショウマは、竹野町で撮影したものです。久美浜町とは最短で10数kmしか離れていません。但馬のアカショウマは本当にアカショウマなのか、真面目に見ないといけないようです。
赤丸:心形 青丸:くさび形 全てが心形ならトリアシショウマ? 葉は細くないのでトリアシショウマに近い。ネットで見た島根県や兵庫県のアカショウマにはこのタイプが多かった。
両種ともに葉は3回3出複葉です。小葉は変異に富みます。
アカショウマ
小葉は楕円形~卵形〜狭卵形。小葉の先端は尾状に伸びて鋭形。基部はくさび形が多いものの切型、明らかに心形のものまである。縁には浅い重鋸歯。小葉はトリアシショウマよりも細い。
トリアシショウマ
小葉はふつう卵形~広卵形。先端は鋭尖形あるいは尾状。基部は心形まれに鈍形。縁にはふぞろいの鋭い重鋸歯。
下から2番目までわずかに分枝する。トリアシショウマは上まで分枝する。
花弁の長さは3mm。トリアシショウマは4mm以上ある。
花期はアカショウマが早く5~7月。トリアシショウマは7~8月。アカショウマの花序の基部はしばしば紅色をおびます。また、花序の側枝は最下のものを除き分枝しません。これは花序の側枝がよく分枝するトリアシショウマとのよい区別点になります。花弁にも特徴があり、アカショウマは、さじ状線形で,長さは3mmで、トリアシショウマは、さじ形で、長さ4ー6mmになります。
豊岡市のある但馬と久美浜町のある丹後は隣接しています。共通する植物は多数ありますが、片方にしかない植物も思いの外たくさんあります。不思議なことです。トリアシショウマはどちらでしょうか? トリアシショウマは但馬にもあるのでしょうか? まずは久美浜町でトリアシショウマを探してみたいと思います。
サラシナショウマ。若い頃は名前の通り、さらして食べることができます。
さてアカショウマのショウマですが、ショウマは升麻と書きます。
升麻は薬草であるサラシナショウマのことです。この植物と似ている植物にはショウマという名前がついています。