オウレン キンポウゲ科
春早く、山地で背の低い植物に可憐な花火のような白い花が咲いていたらオウレンかもしれません。今年も暖冬で早く咲いているようで、但馬でも2月中旬に咲いているという報告があります。
オウレンは、あるところにはたくさんあって、一面がこの花ということもあります。オウレンは薬草としても知られており、山で栽培されていたこともあるので、場所によってはその名残の可能性もあります。
小さな花をよく見てみましょう。長い花びらと短い花びらがあるように見えます。短いほうの花びらは花の内側にあり、長いほうの花びらは外側にあります。短いほうが本当の花びらで、長いほうは萼片なのだそうです。形も少し違いますね。
雄しべや雌しべに注目してみましょう。雄しべだけの花があります。それは雄花です。雄しべも雌しべもある花があります。これは両性花です。雄花だけの株、両性花だけの株、一株に3、4個付く花に雄花と両性花が交じっている株、雌花だけの株、雄しべと雌しべがあるものの雄しべは痕跡的で機能しているとは思えない花が着いている株などいろいろなものがあるようです。この一見、でたらめな花の性ですが、株の大きさや成熟度によって花が決まると書かれているものもあります。その文献によると「成熟に従い、雄株→両性花の株→雌株」となるそうです。時間のある方はぜひ詳しく観察してみてください。
さて、このオウレンですが薬草として有名です。もともとは中国ではシナオウレンが利用されていましたが、奈良時代になって、日本でもよく似た日本産のオウレンが使われるようになりました。江戸時代には栽培されたものが、中国に輸出されるようになりました。日本産オウレンは「越前黄連」「因州黄連」「丹波黄連」が有名でしたが、1978年頃から中国産の栽培黄連が市場に出回り、価格競争に敗れて「丹波黄連」は、2005年に栽培農家がなくなりました。現在,黄連の生産地としては「越前黄連」の福井県大野市が残っているだけのようです。
兵庫県人としては「丹波黄連」が気になります。「丹波黄連」は、丹波市山南町を中心に栽培されていたようで、セリバオウレンの畑栽培が主流で、一部林間栽培もあったようです。ちなみに、この記事の写真のオウレンは広義のオウレンで、狭義ではキクバオウレンになります。