情報特急ノキシノブ(広義) ウラボシ科
昔は、但馬でノキシノブといえば、氷ノ山のような高い山はミヤマノキシノブで、低い場所はノキシノブということになっていました。またシダに疎い私でも生野峠を越えるとヒメノキシノブというのが出てくるらしいという話は聞いていました。
2018年以降様子が大きく変わります。
ノキシノブ類 には異数体を含むたくさんの倍数体が知られていて、非常に複雑な仲間であろうと思われていました。2018年に藤原泰央氏らによって整理された時には、ノキシノブ、ナガオノキシノブ、ミカワノキシノブ、クロノキシノブ、ツクシノキシノブ、フジノキシノブと多くの名前が出てきます。その中で兵庫県にはノキシノブ、クロノキシノブ、フジノキシノブが確認されました。
それでは、私が見ていた但馬のノキシノブは誰なのでしょう?
どうやらクロノキシノブのようです。葉柄が黒いのが他2種とのとりあえずの識別点です。しかし困ったことに日本海側や近畿地方では葉柄が緑色のクロノキシノブが見つかっているのだそうです。そこで正しく区別するには鱗片をよく見る必要がありますが、数をたくさん見た愛好家でないと難しいようです、なので自信のない私は本記事の題をノキシノブ(広義)とした次第です。
さらに新顔が登場します。
2024年に発表されたタジマノキシノブという新種です。名前に但馬が入って大変嬉しいです。但馬には4倍体・5倍体・6倍体のノキシノブが分布しているのですが、そのうちの6倍体がタジマノキシノブとなりました。但馬の各地に分布するようです。
ノキシノブは、普通に見られるシダ植物です。苔の生えた木の幹や岩場や石垣などに生えています。
ノキシノブのノキは軒です。シノブはシノブというシダ植物とも「忍ぶ」という語だともされています。古い民家の軒などに生える植物で、土のないところに耐え忍んで生えている、または、シノブという植物によく似た生え方をしているということからついた名前のようです。
ノキシノブはシダ植物なので花は咲かず胞子で増えます。
葉の裏には胞子がいっぱいつまった丸くて結構立派な胞子嚢が2列に並びます。その様子からヤツメランという名前もあるようです。