サンショウモ サンショウモ科
浮遊性のシダ植物です。暖地では多年草化するそうですが但馬では一年草です。
昔はいくらでもあったようですが、現在では非常に稀な植物になっています。
環境省カテゴリでは、絶滅危惧Ⅱ類(VU)ですが、兵庫県では、RDB Aランク種で、絶滅寸前と言ってよいと思います。どうやら農薬に弱かったようで一気に減ったと思われます。
私が初めて見たのは1990年代です。豊岡市の1カ所のため池にのみ見られました。次に見たのは、県立コウノトリの郷公園が開園されてしばらくたった頃です。写真は2003年のものです。ビオトープを作ると出てきました。唯一の自生地は、一山ほど越えた谷ですから復活するのは自然なことだったのかもしれません。
自生地からはそれから数年後に消えました。その池にはブラックバスが入れられたりして環境が悪化しました。ブラックバスの駆除はしたのですが、現在ではアメリカザリガニが入ったようで、何も浮いていない悲しい池になっています。
一方で、コウノトリの郷公園は、サンショウモ・パラダイスになりました。ほんの一部で確認されていたサンショウモは、年々分布を拡げ、郷公園も池やビオトープの至るところに普通に見られるようになりました。
それでも一年草なので毎年ドキドキしながら出てくるのを待ちます。このサンショウモ、やっかいなことに増えるときには非常に増えるのですが、翌年には消えてしまうようなことがあるとされています。兵庫県のレデデータブックには、「産地記録は多いが、毎年見られるわけではなく、不安定である。生育地のため池の水質変化等に注意し、生育環境を保全することが必要である。」と書かれています。
サンショウモは、コウノトリの郷公園ではコウノトリをはじめとする保護上重要な生き物たちと一緒に暮らしています。
サンショウモというのは、その葉がサンショウの葉に似ているからだとされています。
不思議なのはその姿です。
水の上には茎に対生する葉が2枚あります。水の下には根があるように見えます。ところがこの根のようなものは、根ではなく葉なのだそうです。葉は2枚に見えて、実は3枚で、そのうちの1枚は根にしか見えません。これ、根ではないのですが、機能的には根の働きをしています。なんか難しそうな話ですね。
秋になると水中葉の基部に球形の大胞子嚢と小胞子嚢が生じるのだそうですが、私にはよく分かりません。写真のものは大胞子嚢なのでしょうか? 小さいのもありますが小胞子嚢なのでしょうか? このような希少なものが生育しつづける恵まれた環境を生かして観察を続けたいと思います。
いずれにしてもこれができると「植物体は枯れても胞子は残る」ので一安心です。それでもやはり春に新しい個体が出るまではドキドキします。