たじまのしぜん

クズ

クズ マメ科

11月の終わり頃、サケの遡上を見に行きました。

2020年は、当たり年でした。2021年は、橋の上から下をのぞいて数十分、なんとか上流に向かう数匹を確認できました。2022年は、粘ったのですが、その川ではついに出会えませんでした。

せっかくですので1時間ほど周辺の散歩をしました。

いろいろな出会いがありましたが、一番印象に残ったのは、葉が落ちて果実がむき出しになったクズでした。

 

「こりゃあ、すごい。増えるわ。」と思ってさやの中を見てみると意外なことに種子は、わずかしか入っていません。調べてみるとクズは、花がさやになるものは少なく、さやの中の種子には発芽しない「しいな」が多いのだそうです。さらに種子は水や空気が通らない皮におおわれていて、その皮が傷つかないと発芽できません。その上、発芽した幼植物は競争に弱いのだそうです。なんか種子では増えそうもない感じですね。

しかしいったん大きくなるとクズは強いのです。

クズは草と図鑑などには書かれていますが、葉は秋には落ちますが、つるはそのまま残ります。つるは太くなり、その基部は木質で、切れば年輪のようなものが見られます。塊根も太くて、最大のものは長さ1mくらいで直径20cmくらいになります。これはもう、ほとんど木ですね。

クズは、塊根の蓄えを使って春先から一気につるを伸ばして、葉を茂らせて競争する植物たちが大きくなる前におおいつくします。相手の植物たちは光が当たらないので枯れてしまいます。

クズの種子は、風や鳥が運ぶわけではありません。ではどうしてこんなに増えたのでしょうか? 役に立つ植物として人間が増やしたのだと思います。記録に残るものとしてはアメリカでの事例があります。

1876年にフィラデルフィア万国博覧会で日本がクズを展示したのが始まりで、園芸植物として、大規模に販売されました。1900年代初頭には、家畜の飼料としてクズが使われ始め、1940年頃には、家畜飼料として頻繁に利用され始めます。また、1930年から1940年代ごろには、土壌侵食を防ぐ目的で、アメリカ南東部で大規模に植えられました。ところが、想像を超えて増えだしたのでしょう。1953年には、土壌保護目的のクズの植え付けは推奨されなくなり、1997年には、有害雑草として規制対象になっています。(この段落、バイオームの記事の要約・改変https://biome.co.jp/biome_blog_224/

クズは、IUCNの定める世界の侵略的外来種ワースト100に選定されています。

クズは、日本では、昔から有用植物として利用されてきています。

かつては、クズは、牛馬の飼料でした。つるからは繊維が取れて衣服になりました。秋の七草の一つですから、花などの風情を愛でられてきました。塊根からデンプンをとり、葛粉として利用されてきました。また、葛根湯の主たる原料であり生薬としても利用されてきました。日本でもきっと各地に植えたのでしょう。それが増えて、今では、鉄道や高速道路の維持管理の邪魔をしたり、林業に大きな被害を与えたり、また生物多様性の低下を招くなど厄介者になっています。

私は、子どもの頃に、ウサギ当番の時に持って行ったのを覚えています。子どもたちにも持たせました。大変お世話になりました。

これは沖縄に生えるよく似たタイワンクズ。

葛根湯といえば、2022年11月に東北大学のグループが、COVID-19急性期症状に対して、漢方薬(「葛根湯(カッコントウ)」と「小柴胡湯加桔梗石膏(ショウサイコトウカキキョウセッコウ)」の併用)が発熱緩和や重症化抑制に効果がある可能性を2つの研究で明らかにしたという発表がありました。まだ、可能性の話ですが、植物、馬鹿にできませんね。漢方薬は安価ですし、今後の研究に期待したいと思います。

クズの語源ですが、奈良県の地名国栖(クズ)からきたといわれています。地図を調べてみると国栖は奈良県吉野郡吉野町にあります。吉野といえば葛粉の本家本元、吉野葛の産地です。そういうことなんですね。

 

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