モリアザミ キク科
キクアザミは日当たりの良い草地に生育する多年草です。表土が分厚いところに生え、主根は20~30cmも垂直に伸び、直径が2cmほどにもなります。茎は高さ1mを越えるものもあります。葉は長楕円形でしばしば羽状に切れ込みます。花は9〜11月に咲きます。立派な根からヤマゴボウとも呼ばれ、粕漬や味噌漬などに加工されて、土産物になっていたりもします。モリアザミは、他にも「菊ごぼう」とか「アザミごぼう」とかの別名も持っています。
アザミの識別は難しいです。その植物がアザミの仲間というのは非常にはっきりとしています。しかし、その先はさっぱりです。何アザミかが確定できません。
そんな中でモリアザミは分かりやすいです。頭花は直径4cmほどもあり、上向きに咲き、総苞片は長さ3〜4㎝、幅3〜4㎜で、先は鋭くて開出するという実に特徴的な姿形をしています。なので一目でモリアザミだと分かります。また、このアザミがあると生えている草原がいい感じに維持されているということも分かるのでうれしくもなります。モリアザミはそんなアザミです。
このモリアザミ、激減しているのだそうです。兵庫県のレッドデータブックでいうと2010年版には、モリアザミは載っていません。たくさんあるので心配ないという評価です。それが2020版では一気にBランクになりました。Bランクというのは、兵庫県下で10カ所くらいでしか見られない希少種になってしまったということです。十分、気をつけないと絶滅するという評価です。
モリアザミ、減ってるんだと思っていつもの場所に見に行きました。
咲いていました。ただ、ちょっと個体数が少ないように思いました。翌年、さらに花の数は減りました。実は、その草原、火入れが中止されていて、ススキが大きくなり、低木も育ち始めていました。きっとそれが影響しているのだと思います。
モリアザミは、大きな根を持っています。大きなものは直径2cmで長さ25cmほどもある根です。この根がなくなるまでは生き残るのだと思います。花が少なかったのはモリアザミが消えたのではなく、花が咲かなかったのだろうと思います。きっと上をススキなどにおおわれたら元気が出ないとか、競争に弱いところがあるのだと思います。根が生き残っている間に草原を元に戻そうと思います。
今年は、種子を採りました。ほとんどは博物館などに送りますが、一部を育ててみようと思います。うまく育ったら根を食べようと思っています。しかし、大きな不安があります。モリアザミは、どうやら冷涼な気候の場所を好むのだそうです。それは私の畑のような一年に何度か日本一の気温を記録するような場所ではありません。仕方がありません、播かれた場所で、頑張ってもらいましょう。
おまけ
念のためにヤマゴボウというモリアザミの別名について書いておきます。ヨウシュヤマゴボウとかマルミノヤマゴボウというヤマゴボウ科の植物があります。ヤマゴボウという名前だから食べられるだろうと思われてよく事故が起きます。両種は有毒植物です。そのために誤解を避けるためにモリアザミを指すヤマゴボウは「山ごぼう」と書かれることが多くあります。どんな植物でも名前だけで判断せずによく調べてから食べるようにしてください。