ホクチアザミ キク科
ホクチアザミは、2020年版の兵庫県版レッドデータブックで、無印からいきなりBランクになりました。Bランクというのは、環境省レッドデータブックの絶滅危惧 IB 類に相当し、県内個体群数 4~10 程度になります。
「個体数は多いが、シカに採食され開花に至っていない個体が多い。今後さらなる減少が懸念される。」と書かれています。
ホクチアザミは、かつては普通に見られる植物でした。特に鉢伏高原にはたくさん見られました。それが一気に減りました。それでもつい最近まではぼちぼち見られたものです。
2017年春、ある植物を探そうと歩き回りました。春は背の高い植物がまだなく、調査をするには好適な季節です。目的の植物は見つかりませんでしたが、ホクチアザミは点々と見つかりました。2018年の春も同じような状況でした。この年は、秋にも別の植物を探すために別の場所を歩き回りました。ススキが大きくなっており体力を消耗する大変な調査でした。この時も目的の植物は見つかりませんでしたが、ホクチアザミには何カ所かで出会えました。昔に比べると全然ですが、ホクチアザミ残ってるなあとちょっと安心しました。
2021年初夏にある植物を探して歩き回りました。この時は目的の植物が見つかりましたが、ホクチアザミはごくわずかしか見つかりませんでした。2022年秋、2018年にホクチアザミを見た場所を中心に歩きました。ホクチアザミは見つかりませんでした。Bランクは当然のようです。ひょっとするともうBランクでも過小評価かもしれません。ホクチアザミは、どうやらシカに選択的に食べられているようです。
2022年春、ホクチアザミを1群落、囲うことにしました。この群落は、毎年、ススキにおおわれて大きくなれず、夏の終わりに刈られて開花することがありません。囲ったおかげで草刈りにあいませんでした。ススキは私が鎌で手刈りしました。ホクチアザミは立派に花をつけました。種子も採れそうです。
鉢伏高原でもようやく1群落の開花・結実に至った個体群を発見することができました。ここでも種子が採れそうです。
絶滅だけは避けられそうです。
ホクチアザミは、アザミという名前がついていますが、アザミの仲間ではなくトウヒレンの仲間です。ホクチアザミは、本州(長野県・静岡県以西)、四国、九州に分布し、朝鮮半島にも知られています。
ホクチというのは火口です。火口というのは、火打石などで起こした火を最初に着火させるのに使う燃えやすい燃料です。葉の裏は真っ白ですが、この毛を集めて火口にしたのでしょう。
兵庫県には6種のトウヒレンの仲間が生育します。ホクチアザミ、キクアザミ、 ネコヤマヒゴタイ、 ミヤコアザミ、 ヒメヒゴタイ、オオダイトウヒレンです。全てが絶滅危惧種で、ホクチアザミ以外は全て自生地が1~2カ所しか残されていません。